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ーーそこまで打ち込んで、亀谷瑞稀は大きくひとつ伸びをする。
画面を辿り、今、うまれたばかりの物語をざっと読み返してみる。
リアリティを出すために、もう少し設定を練る必要があるかも知れない。思いついたままに採用した「ZOO動物園」というコンビ名も我ながら謎だった。
主人公がくだらないネットサーフィンで時間を無駄にするくだりには、存分に自戒がこめられているな、と苦笑いする。
そんなことを延々と考えている内に尿意が限界に達し、ひとまずノートパソコンをパタンと閉じた。
亀谷瑞稀には夢があった。いつの日か作家デビューを果たし、自分の書いた物語をたくさんの人に読んでもらうこと。
彼女はまだ何者でもない、小説家のたまごである。大き過ぎる夢と体力ばかりを持て余した、どこにでも転がっている、十九歳の若者だった。
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