3人が本棚に入れています
本棚に追加
その章には、下積み時代を共に過ごした、漫画家志望の彼女との思い出が綴られていた。
実際のエピソードをベースにした自伝的小説とはいえ、関係者のプライバシーへの配慮や物語としての面白さを重視して、もちろん様々なアレンジを加えているのだろう。
あたしは漫画家を志したことはないし、少し、いやかなり美化されたエピソードが散見されたが、その彼女のモデルは、間違いなくあたしなのだった。
知り合った時期や彼女に渡した香水のプレゼントなど、要所要所の記述が、あたしの記憶と一致していた。
決定的なのが、一万円を借りた理由だった。
この小説に書かれている通り、桐嶋はとあるライブに出演するためのエントリー料がどうしても足りなくて、あたしに一万円を借りたのだ。
当時、相方に恵まれずやむを得ずピン芸人として活動していたキリリンは、そのライブに出演したことがきっかけで、現在の相方であるタイゾーと運命的な出会いを果たすのだった。
続く章の内容を要約するとこうだ。
最初のコメントを投稿しよう!