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今、うまれる
出会った頃のあたしたちはみな、たまごだった。
肌艶ばかりがつるりと良くて、色も形も似たような、大きすぎる夢と体力ばかりを持て余した、どこにでも転がっている十九歳の若者だった。
この十年あまりで、いくつかのたまごはその殻をコツコツと突き破り、やがて大空へと飛び立った。
美大生だった鷹也は、今や数々の人気アーティストのPVを手がける新進気鋭の若手クリエイターに、読者モデルとしてファッション誌の隅っこでギャルポーズを決めていた美羽は、どうにもおしゃれ過ぎる育児情報を発信する人気インスタグラマーに。
中でも突出しているのは、やはり桐嶋だろう。
お笑い養成所に通う、内臓のおさまり具合が不安になるほどの痩せっぽち青年だった彼は、今やテレビやラジオやユーチューブに、レギュラー番組を何本も持つ売れっ子芸人へと成長した。
何かしらのメディアに触れるたび、少し頬に肉が付き、どうにか男前芸人のラインを保っているらしい彼の幸薄顔や、「キリリン」というふざけた芸名、「ZOO動物園」という謎のコンビ名などが嫌でも視界に飛び込んでくる。
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