01.死神はとても麗しく

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「……っ、おいしい……!」 「当たり前だ」 一番に含んだのは豚汁。味噌のコクも、干からびた喉を溶かすような温かさも、あまりに久しい。それに、母の豚汁とよく似ていて、不覚にも視界を滲ませる。キャベツとネギをふんだんに使った母の豚汁、そのものだった。 「あの……食材ってどこから……」 潤った喉から、控えめに声を通す。 「買ってきた。買い物くらいできるぞ俺は」 「その格好で……?」 「……何か不満があるのか」 未だ箸を持たず腕を組んだままの男は、ギロリと岬を睨んだ。鋭利な矢を彷彿とさせるほどの、眼力だった。しかし、人と長く目を合わせるのが久しぶりで、岬の心は弾んだ。無意識に、顔を綻ばせるほどに。 「何がおかしい」 「え?」 「にやけているだろう。俺の見てくれに、おかしなところでもあるのか」 寄せられた男の眉間には、皺が縦に刻まれていた。その下で、白く長いまつ毛が、これまた鋭利に尖っているのが分かる。 あれほど沈んでいたのに、乾ききっていたのに。口角って、鈍らないのかな……。 岬は頬を押さえながら視線を落とす。最後に笑った記憶があるのは、母親が倒れるよりも前の事だった。 「おかしくなんて……むしろ綺麗です、とても」 「そうか。ならいい」 鋭いところは数多、それでも隙間と味には優しさが垣間見える。不思議、と内側でつぶやきながら、和え物を頬張った。
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