01.死神はとても麗しく

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どこか呆れた様子の男は腰を下ろし、視線を沈める。横たわっている自分の身体も一緒に沈んでいることに気が付き、岬はベッドの上にいることをようやく悟った。 暑さに蒸れたベッドの先、視線をすこし持ち上げると白髪(はくはつ)の男が額を押さえている。 「岬」 そして、当たり前のように名前を呼ぶ。岬は肩を竦ませ、初めてピタリ視線を合わせた。 切れ長の吊り目に、鈍色の瞳。白髪は糸を垂らしたように綺麗で、かつ細い。肩を撫でるくらいの長さが、男性にしては似合っていて、印象的。じりじりと距離を詰める眉目秀麗を見据えて、岬は口をキュッと結ぶ。男と分かるのに、“美人”と称えたくなるほどの風体だった。 「一応言っておくが、お前は母親のいる極楽にはいけないぞ」 「え……」 身体を起こすと、頬に白髪がサラリと触れる。近くで見ると、彼は一層美人だった。 「正しくは、まだ、だな。お前はまだ死んじゃいない」 にやり、弧を描く口角に視界を奪われる。
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