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期待なのか、不安なのかわからない感情が、体内で溢れて口から漏れ出しそうだ。
おずおずと小屋と小屋の間を通り、そっと様子を伺う。複数の村人が、行き来するのが見えた。
まず、宝の目を引いたのはその村人たちの髪の色だった。
男女にも、年齢にも関わらず白い髪。
半獣たちはまちまちの獣の毛並みだったから、人間の髪の色もそれぞれ違うのかと思っていた。
そして、皆、疲れ切ったように足を引きずって歩いている。身に着けているものも、集落の半獣たちよりみすぼらしい。
なぜだろうとじっと様子を見ていると、村人がふと宝に目をやった。そしてぎょっとしたように、
「――お前、何者だ!?」
と大きな声を上げた。宝が立ちすくむと、わらわらと村人たちが姿を現した。その全員が、白い髪。
「あ、あの……私……」
宝が一歩踏み出すと、それに合わせて取り囲んだものたちが一歩引く。一定の距離よりは近づこうとせず、ひそひそと何かを話しながら宝を見る目は、集落では見たことのない冷たいものだった。
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