どうぞ、もう会えませんように

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 宝は自分の怯えをどうにか押さえつけ、口を開いた。 「私、お父さんとお母さんに会いたいんです……この村に、いますよね?」  震える声で言うと、男たちはまた顔を見合わせ、小声でひそひそと話をした。  やがて、一人が小屋を出て行くと、しばらくして女性を一人連れて戻って来た。  艶のない白い髪を無造作に束ね、血色の悪い顔で宝を見下ろしている。  顔に見覚えはないし、自分とはあまり似ていない。けれど、その匂いは、自分を産んだ母親であると告げていた。  その母親の表情は……ほとんど『困惑』が占めていた。 「蘇向(ソムカ)……なんですか? この子が?」 「おそらくな」  女性は見定めるように宝をじろじろと眺め、話しかけたら襲い掛かられるのではないかと思っているかのように躊躇いながら、 「……一人なの? 一緒に落ちた、父親は?」  それを聞いて、やはり一緒に山を落ちた大人が父親だったのだと知る。
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