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「……私だけ、助かって……」
その返事に、女性は一つ長い息を吐いた。
「……そうかい」
とだけ言って腕を組むと、中年の男たちに目をやった。
男たちと宝の母親は目くばせし、小屋の隅へと移動した。
ひそひそと小声で話している……だが、宝が意識を集中すれば、その声は耳元で鳴っているかのようにはっきりと聞き取れた。
『……だから、とりあえずは家に連れて帰れ』
『無理ですよ! うちには赤ん坊もいるのに!』
『ここに置いておくわけにもいかないだろう』
『……でも……ずっとは、無理ですから、何とかしてくださいよ』
『何とか、考えてみるから』
いたたまれず、宝は俯いた。
その宝のもとに、渋々といった感じで母親が歩み寄り、
「……行くよ。ついてきな」
とぼそりと言うと、出口に向かって歩きだした。宝が慌てて立ち上がると、男の一人が口の中で呟いた言葉が耳に入った。
『全く、本当に呪われた子だ』
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