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「気にしなくていいよとか言われてもね。気にならないはずないんだから」
「はい……」
「チオラもね。あの人もなんだかんだ忙しそうだもんね」
「そうなんです。なのにいっつも来てくれるから」
「まあ、さすがにひとりはね。心配するよ」
「べつに、大丈夫なんですけど……」
曖昧に笑います。心配されるのって、もしかしたらけっこう苦手なのかもしれないです。大丈夫って言ってるんだから、放っておいてほしい。
急にロジンが噴き出しました。そのまま笑い続けるので、どうしようか困ってしまいます。夜なので大きい声を出しているわけじゃないのですが。ひとしきり笑ったあと、ロジンが目じりに浮かんだ涙をぬぐいながら、わたしの頭を布越しに撫でました。
「いや、ごめん。あんまりハルにそっくりなこと言うもんだから」
「ええと……」
「笑い方までそっくりなんだから。いやあ、これは、リーダイもチオラも笑うだろうな」
「……そんなにですか?」
ロジンがクッキーを口に放りこんでから、ちらっとわたしを見ました。声色が急にまじめなものになります。
「――心配されるのが嫌い?」
う、と詰まってしまいました。濃いブルーの布をかき合わせて、顔の下半分を隠します。そんな風に言い当てられると、さすがに恥ずかしいというか、気まずいというか。
おまえはそれだけ幼いんだと言われているような。
ロジンがまたちょっと笑います。木の実が混じっているクッキーを一枚とって、わたしの前に出してきます。布の下から手を出して、受け取ります。
「ハルがね、よく言ってたから。心配されるのが嫌って。まあ、ね、あのおねーさんは、自分がしっかりできてないと、死んじゃいそうな顔するものだから」
「はい……」
「でも、テトはまだ九歳でしょう。親もいないんだから。あとは……やっぱり、ちょっと遠巻きにされてるから」
「仕方ないですね」
レトが罪のお柱様の手足として、旅団からいなくなって、もう半年以上経っています。大人の人たちも、ハルねえさんたちも、わたしが関係ないこととか、そもそも罪のお柱様はなにもしていない人には関係ないことを説明してくださいましたが、どうしたってわたしは、不吉な子として遠巻きにされています。
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