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そもそも、魔法が使えなくて、人間以外を見ることができないわたしは、なんだか変な子、という扱いでした。からかってくるのは男の子たちで、同じ年の女の子や、ちょっと上の女の子は男の子たちに怒ったり、わたしをなぐさめたりするものでした。
お友達と、呼んでいました。
そのなぐさめを、内心うっとうしく思っていても。
レトのように、うるさいと振り払うことはできませんでした。だったら、それらを友情として受け取るのが、公平なことだと思ったのです。
まさかここまでの手のひら返しをされるとは思っていなかったのですけれど。
「レトが罪のお柱様のためにお役目を果たしていたのは、たしかなことなんですから。仕方ないです。だれだって、人を殺した人の家族は、嫌がるでしょう?」
「でも、さすがに目にあまるね。口出しはするよ」
「はあい……」
わたしが料理をすることはなくなりました。頼まれるのは食器洗いや洗濯もの。火の番もさせてもらえません。あの子が作ったご飯なんて食べられないと何人かが言い出せば、その場で叱られるのはその子たちであっても、後からこっそり呼ばれるのはわたしです。あんな子たちがいるなら、もう料理しません。ちょっと顔をうつむけて言えば、ごめんねと謝ってはくれました。
聞き分けのよさに、大人たちはほっとしたようでしたが、べつに、自分たちの親に泣きついているような甘ったれのために、自分が働いてあげる必要はないなってだけでした。レトだったら、ばかだろと直接言うでしょうけど、わたしはそういうことする方が面倒になりそうで、嫌でした。
ハルねえさんがいたら、あんなに派手なことにはならなかったでしょう。あの、イーニーの街では、誰もなにも言わなかったのですから。そのことがもう、うんと、わたしをうんざりさせました。
「……こんな風にさせて、本当にごめんね」
「ううん」
ロジンには、言ってもいいかな、と悩みます。ハルねえさんと、一年のあいだにねって約束をしたこと。それがあるから、わりとけっこう平気なのです。
ハルねえさんが約束を破るはずないから。
「平気じゃないですけど、平気です。お仕事忙しいですし、お勉強も大変だし。悪口なんか言う人って、ひまそうでうらやましいです」
「うん」
「心配かけてごめんなさい。でも、大丈夫です」
「ん……」
ふあ、とあくびがこぼれました。本当はもう眠っている時間です。ロジンがもう戻ろうかと言いました。せっかく時間をかけてくれたのに、いらないですと断って申し訳なくなりました。
ちょっと待っててねとまたロジンが言って、テントの中に入ります。ロジンのテントはほかの人たちのものと違って、綺麗な模様がついています。ロジンのご両親は織物を売っているそうで、その売り物の一つだと言っていました。
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