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なんだかかわいいお花が描いてある小さな缶を持って、ロジンが出てきました。わたしの横にしゃがみこみます。
「なに食べたっけ。ココアと、くるみのと、あといちごジャム?」
「はい」
「おいしかった?」
「とっても! こんなに甘いの、びっくりしました」
「よかった。じゃあほかのもね」
クッキーを一枚一枚とって、缶の中に入れてくれます。小さい缶の中にはわざわざ薄い紙が敷いてあって、ずっとわたしと同じ旅をしているはずなのに、こんなこまごましたしたものをそろえているのが不思議でなりません。あんまり荷物が多そうには見えないのですが。蓋の内側まで模様があって、透明のビーズがところどころ飾ってありました。お礼を言って受け取ります。
クッキーが入っていた缶の中は、もう半分も残っていません。ロジンはほとんど食べていないのに。高価そうなものなのに。
「ごめんなさい。こんなにたくさん……」
「いいよ。ここから長いしね」
次の目的地までは、おおよそ一か月はかかる予定です。そのあいだに旅団に来てほしいと言われたらそちらにも行きますし、道が荒れているかもしれませんし。缶の蓋に描いてある青い花の模様を見つめて、ちょっと考えてから、口を開きます。
「ありがとうございます。大事に食べます」
「うん。それでよし」
「はい」
戻ろうかと言って、ロジンが立ち上がります。頭からかぶっている布を踏まないように気をつけながら立ち上がります。ロジンがゆっくり歩き出しました。テントに飾ってある鉄製の飾りがからから音を立ててました。
「あの、ロジン。この布って……」
「ああ、ごめんね、付き合わせて。テントに戻ったら、もらおうか」
風が布を揺らしています。頭からすっぽりかぶっているのに、膝の下あたりまでありました。これも、ロジンのご両親が売っているものなのでしょうか。ちらっとロジンの方をうかがいます。
ロジンはいつも手袋をつけて、だいたい薬を作る場所にいます。うんと背が高くて、目の色はメープルシロップみたいな色です。患者さんと話すときの言葉遣いが大人っぽくて、いいなあといつも思います。
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