ティトラ・テットと青の星。

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 ロジンも、ちいさいころからご両親から離れて、旅団に入っています。お薬のことに詳しいですが、一番得意なのは、計算ごとだよと言ってました。計算ごとって、どういうことをしてるのか、実はよくわかってないです。 「あのね」  テントの前で、ロジンがわたしの布に留めたピンを取ってくれます。ゆっくりした口調で、ロジンが話し出します。 「おれの家はね、月と星の向こうから、神様がのぞき込んでくるって、昔から言っててね」 「そうなんですか? 本当に?」 「いや、わかんないよ。月と星の向こうのことなんか、わからないからね。それで、神様は、髪がきれいで、良い子を見つけて、連れていくんだって」  そんなことあるんでしょうか。神様や妖精のお話しは、うんとたくさんあって、いろんな種類があって、こっちではこう言われているものがあっちではこう、みたいなことがたくさんあります。  昔聞いた月の神様のお話しでは、罪人として地上に追い出されて、そのあとの行方はわからないというものでした。そのバツとして、太陽とは違って、月は大きくなったり小さくなったり、ひとつきのうち、一日は夜から見えなくなってしまうのだと言っていました。  ロジンが大きな布を簡単に畳んで、空いた方の手でわたしの頭を撫でてくれました。くしゃくしゃっと、ちょっと乱暴です。 「だから、大事な子は、夜のうちは布の下に隠せってね。ま、のんきな一人息子だけど、これくらいは教えを守らないと」 「……えへ」 「困ったことがあっても、なくても、おれに言うように。わかった?」 「はい」 「うん。じゃあ、おやすみ。いい夢が見られますように」  おやすみなさいと言って、テントの中に入ります。毎日一生懸命お勉強をがんばっているお姉さんたちを起こさないように静かに眠る準備をして、寝具を出して。  眠る前はいつものお祈り。  わたしに与えられる祝福は、わたしの大事なひとに。  その人に与えられる災禍は、わたしの元に。  おやすみなさいませ、わたしたちの神様。           *  クッキーは一日一枚と決めて、夜寝る前に。そいういう旅を送りました。前だったらにいさんと分けていましたし、もしかしたらお友達とも分けていたかもしれませんが、そんなことはしなくなってしまいました。
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