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既成のきりたんぽがあれば、鍋の作り方は簡単だ。
きりたんぽ以外をスープで煮込み、食べる直前にきりたんぽを投入する。鍋の中で少しだけ、自分の好きな具合にたんぽをやわらかくしたら完成。
みんなで鍋を囲うことはせず、大きめの器に一食分をよそい、もそもそ、ずずずと各自で頂く。
三が日の朝、テレビの特番が流れていると本当にそれっぽい。年中食べるきりたんぽ鍋も、この日はどことなく特別だ。食い疲れた胃に染みるからか。ぼんやりする間もなく、箱根の往路か復路が始まる――そんなことを、雑煮の入ったお腹を抱えて思い出した。
私は結婚し家を出て、他県の夫に毎年雑煮を作っている。かつお出汁の雑煮は美味しく、きりたんぽ鍋も相変わらず食べるけれど、ただしそれは正月ではない。
だらしなくリビングに寝そべりながら、肩からすっぽりブランケットに包まれる。家族には内緒で、胃の中の餅をこねくり回して、瞼の裏できりたんぽを作ってみる。
駅伝の号砲が耳朶を掠め、遠のいた。
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