やわらかな真白の

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 私が嫁に行く前の話だ。  家は父母私の三人家族で、どこにでもいる平成の核家族。  お正月は自分の家や父母の実家に顔を出して新年の挨拶や宴会をするのだけれど、どこに行っても雑煮は食べなかったような気がする。  餅はある。砂糖醤油に付けた餅やきな粉餅は出てきたし、自分たちでつく餅は人に配るほどあったはずだ。  やわらかな真白の、あきたこまちの。  それを雑煮にしないのは、汁物の枠が他で埋まっていたからなのだろう。私が三が日に食べていたのは、きりたんぽ鍋だった。  きりたんぽ鍋の具材はおおむね決まっている。  ささがきごぼう、  糸こんにゃく、  長ネギ、  せり(根っこも食べるのが通である!)、  まいたけ、  鶏肉、  そしてきりたんぽ。  鶏肉は比内地鶏だと本場感が増すけれど、元々が身の硬い品種なので好みで変えたらいい。  とはいえ、スープは比内地鶏のものが望ましく、具材もおおむねとは言ったものの、我が家はこれ以上が入っても、逆に何かが欠けてもいけない。無ければ買いに走るほどの固定メンツなのだった。
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