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その後も、僕達は、しばらくベッドで抱き合っていた。
ふいに琴子の瞳から涙が溢れた。
涙は琴子の頬を伝い、僕の胸を濡らした。琴子は僕に背を向けると、声を殺して泣いた。
「どうして泣いているの?」
僕がそっと尋ねると、
「分からない」
そう言って琴子は、ますます泣いた。
「大丈夫、泣かなくていいよ」
僕は後ろから琴子を抱きしめた。
「何でそんなこと言うの?」
琴子は涙声で僕に尋ねた。
「自分を責めているのかな、と思って」
僕が言うと、
「優しいね、透は、いつも」
そう言って、琴子は、抱きしめる僕の掌に自分の掌を重ねた。
「わたし間違ったのかな?あの時……高二の夏、
崇史のところに……」
「もう話さないで」
僕は琴子の言葉を遮った。
「多分、必要だったんだよ、あの時の琴子には、
そうすることが、それに……」
(あの時には、もう、戻れない)僕はその言葉を飲み込んだ。
「わたしは……」
そう言うと、琴子は両手で顔を覆って、声を押し殺して涙を流し続けた。
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