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 その後、僕達は階下で母と一緒に夕飯を食べた。  琴子は、昔のように、明るく無邪気に笑いながら母と話をした。  それから、僕は琴子を車で家まで送った。 「勝手だと思っている」  家まで送る車の中で、琴子が話し始めた。 「だけど、やっぱり、わたしはわたしの道を  行く」   窓の外を見ながら琴子は話した。 「わたしは、魅かれるものに、正直で  ありたい」  街灯の明かりが、窓ガラス越しに琴子の顔を照らす。 「ただ、透だけは特別、特別なの」  琴子が僕の方を向く。 「だから、どこにもいかないで、わたしの傍に  いて欲しい」  と不安そうに僕を見つめた。
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