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「聖女様、ありがとうございます! おおっ、あの恐ろしい悪魔がこんな粉々にっ。ああ、さすが聖女様っ! ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」
村長が散らばった悪魔の肉片に怯えながらも感激している。
教会に悪魔が巣食ってからというもの近隣の村々に犠牲者が多発していたのだ。そこで村長が聖ヴェリタリアス教団に討伐依頼を出し、悪魔討伐部隊の聖女が派遣されたのである。
依頼主が現われて、腰を抜かしていたモーリスは慌てて立ち上がった。しかも今まで怯えていたのが嘘のように高飛車に振る舞う。
「当然よ。私は教団所属の聖女よ? 悪魔討伐部隊を舐めないでほしいわね」
「おおっ、聖女様がお一人で?」
「候補生なんて役に立たないものよ。そこの候補生なんて取り込まれちゃって情けない。やっぱりまだまだ学生ね」
「なんとお礼を申し上げればいいかっ! これで村人も安心して暮らせます! どうぞ、こちらが寄付金です。受け取ってください」
「お心遣いありがとうございます。神もこの崇高な行為を見ていることでしょう。この村に神の御加護がありますように」
寄付金という名の高額報酬が支払われた。
私はその光景を淡々と見つめる。
討伐前にも寄付金という名の前渡金を受け取り、討伐後も寄付金という名の成功報酬を受け取る。寄付金とは善意だが、この善意がなければこの村には二度と聖女が派遣されることはない。
「村人たちが聖女様に感謝の席を設けたいと申しております。今夜はぜひとも村でお過ごしください。村を挙げて歓迎いたします」
「あらそう? 本当はすぐに王都の教団に帰りたいんだけど、そこまで言うなら仕方ないわ。ともに神に祈りを捧げましょう」
「ありがとうございます! では村へお越しください。お待ちしています」
そう言って村長が立ち去って行った。
モーリスはそれを見送ると私を振り返る。
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