聖女と悪魔

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「あなたは悪魔の残骸処理(ざんがいしょり)と、そこで寝転がってる候補生の世話をよろしく。明日、村を出るまでにしとくのよ」  モーリスは高飛車(たかびしゃ)に命令すると立ち去ろうとした。今から村で感謝の(うたげ)が行なわれるのだろう。  でもその前に待ってほしい。私はモーリスと大事な約束をした。 「それはいいですけど、約束の報酬を払ってください。報酬から八割、忘れていませんよね?」 「ッ、たかが候補生の癖に……!」 「約束は約束です。聖女サマとあろう方が約束を破るなんてことしないでください」  淡々と言うと、モーリスは舌打ちして袋から硬貨と紙幣を鷲掴む。そして私に向かって叩きつけてきた。  バシッ!  痛い。小さな硬貨と紙幣でも叩きつけられると痛いものだ。  スゥッと目が据わる。……情緒不安定なことしてるんじゃないっての。 「ほら拾いなさいよ! 報酬欲しいんでしょ?」 「はい、報酬は正統な対価ですから」  私は床に膝をつき、硬貨や紙幣を淡々と拾う。  動揺すら見せない私にモーリスは忌々(いまいま)しげに舌打ちすると、「さっさと処理しときなさいよね!」と吐き捨てて教会を出て行った。  ようやく静かになった。  私は気絶している聖女候補生に声を掛ける。
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