マッチョ母娘

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マッチョ母娘

「我が娘カチュアよ。よくぞ戻りましたね」  女王が、娘であるカチュアの労をねぎらう。  肩が見えるドレスを着ているからか、女王の筋肉がゴツゴツしている。娘と比べても遜色がない。  一方、父王様の方は、気の毒なほどに痩せている。 「魔物討伐、大義でした」 「いえ。クモごときに不覚を取り、こちらの冒険者フォトンに助けてもらった次第です。あのままでしたら、私のシックスパックが撫でられ続けていたところでしょう」  苗床にされるという想像は、なさらないと。まあ、ウブそうだし、性の知識が乏しいのかも。 「運も筋肉のウチですよ、カチュア。日頃から鍛えているから、運を引き寄せることができるのです」  女王の言葉は謎理論だが、妙な説得力がある。  運も筋肉の一つとか、パワーワードすぎるだろ。 「フォトンと言いましたね? 娘カチュアを助け出してくれたこと、感謝いたします。報酬の路銀と、装備を持ち帰りください」  豪華なトレーに、金銭と豪華な装備品が乗っていた。  装備は正直、間に合っている。とはいえこれは、受け取らないと逆に失礼なやつだ。  この宝玉付き手甲は、いいな。肩までカバーしてくれるだけじゃない。宝石に浄化の魔法がこめられていて、手をかざすと一瞬で周りのアンデッドが消滅する仕組みだ。 『魔法の法衣も、装飾が鮮やかなだけではないぞよ。軽さもアップしておる』 「さすが王国装備ですね」  精霊レーやんこと、魔王レメゲトンとともに、装備の目利きをする。  ロッドも新調し、より戦闘力が増した。 『報酬装備など換金アイテムと相場が決まっておるが、この女王はわきまえておるな』  レーやんのいうとおりだ。我々が今必要としている装備を、女王は理解している。 「ありがたき幸せ。ただわたしとしましては、馬を一頭お貸しいただければ十分だったのですが」 「ゼム将軍のもとへ行くと、おっしゃっていましたね?」 「はい」 「あなたはたしか、ここから南東にあるエアロサ国から来たのでしたね。たしかにあそこを抑え込まれては、親交のある南の国家との繋がりを絶たれてしまいます」  わが故郷へ侵攻を、ゼム将軍はあきらめない。撃退しておきたかった。 「急ぎますので、これにて」 「待ちなさい、フォトン」  わたしが立ち去ろうとすると、女王に呼び止められる。 「我々にとっても、将軍は敵です。今回の一件が、将軍の仕業だという証拠も掴みました。打倒する大義名分ができたというもの。ぜひ討伐に、ご同行ください」  ゼム将軍の所属するネロック王国からも、将軍撃滅の了承も得ているという。  私利私欲で魔物を動かしていたことが発覚し、将軍は完全に孤立しているらしい。 「しかし、彼はネクロマンサー。これまで殺してきた相手を配下として、ネロック国の軍事力さえ超えるスケルトン兵を率いているとか。油断なきよう」 「はい。心得ております」 「そうそう。このカチュアも連れていきなさい。彼女はテンプラー、神に仕える騎士です。浄化魔法、治癒は自分でできますから、あなたの手をわずらわせることはないでしょう」  女王から話を聞いた直後、近衛兵から伝達が。 「多数のスケルトン兵が、この国に押し寄せています。ゼム将軍と思われます!」 「もう来ましたか。おそらくネロックもやられたでしょう」  荒々しく、女王は騎士団に指示を送る。  女王に、わたしは提案してみた。  城の守りは、騎士団に請け負ってもらう。  わたしとカチュアは少数精鋭で、直接ゼムを叩く作戦だ。 「危険ですが、カチュアはわたしが守ります。突破口さえ開いてくれれば、あとはわたしが単騎で」 「そういうわけにはいかない! フォトンだけを行かせるなんて」 「わたしには、その方が都合がいいのです。この装備もあります。負けはしません」  大軍勢を相手に、カチュアを守りつつ戦うのは難しかろう。  最短で将軍に詰め寄って、叩く。
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