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アンデッド 対 筋肉
「大群ですね」
敵軍の位置はかなり遠いのに、足音が響いている。
「ああ。それに、ガイコツ兵士ばかりだ」
周囲にいるのは、武装したスケルトンの騎士、亡霊の魔術師、他はゾンビだ。
「ゾンビが街に入られたら、たちまち住民を食らって繁殖してしまう」
おそらくネロックは、将軍の手によって落ちた。彼らゾンビ兵は、ネロックの住民だろう。
「幸い、ココは草原です。魔法打ち放題ですから、焼いてしまいましょう。カチュアは、騎士団の指揮をお願いします」
「そうだな。兵にもそう伝えよう」
ゾンビなんかに、足止めされるわけにはいかない。
「わたしは先行して、少しでも戦線を崩します」
「一人で大丈夫か?」
「わかりませんが、巻き添えにしたくないので」
ロッドを手に、わたしは突撃した。
「ファイアー・ハンマー」
炎の塊をロッドの両端に展開して、ゾンビやスケルトンを殴り飛ばす。
質量のある火炎の球体で殴られたアンデッドが、爆発を起こして隊の密集地点に着弾した。
近接戦闘こそ戦闘の華だが、そうも言っていられない。美学は、後回し。今は、数を減らさねば。
『フォトン、来たぞ。囲まれる』
「アイス・リーパー」
炎の球を、氷のカマに変えた。自分の周囲にいるアンデッドの群れを、切り刻む。
『頭を潰さなければ死なぬ、というわけではない。ダメージを与えれば消滅する』
「なら、安心ですね。ライトニング・スピア」
遠くにいるゴースト魔法使いに、雷の槍を展開して、リーチを飛ばす。
ゴーストを倒して、ロッドに岩の塊を展開する。着地と同時に、岩を地面に叩きつけた。
「ロック・クラッシュ」
爆風と砕けた岩が、アンデッドの群れを射抜き、押しつぶす。
炎を拳にまとわせて、右からくるゾンビを殴り焼き尽くした。
背面にいるスケルトンには、キックにまとわせた氷の剣で貫く。
「数は減らせましたが、まだ大物が残っていますね」
ゼム将軍まで、まだ遠い。
おまけに、兵隊がこちらに集まってくる。誰が脅威なのか、敵側もわかってきたようだ。
防衛の戦略としては正しいのだが、こちらの目的に反する。これでは、永遠にゼムのもとへはたどり着けない。
『確実に防衛網は、削っておるのだが』
「敵も物量だけですが、それゆえに厄介ですね」
プロイ・テンプル騎士団だけで、これだけのゾンビやスケルトンを捌くのは骨が折れる。
『やむをえんな。こちらも召喚じゃ』
わたしの影が、質量を持った分身へと変わった。真っ黒いわたしが、敵の群れに突撃していく。
『お主の魔力を三分の一だけ借りて、分身を作った。我が操っておるから死ぬことはなかろう』
「助かります。ですが、それでもこれだけの数です。む?」
「おおおおおおお!」
なにやら赤毛の女が、敵陣にぶちかましを決めた。
目の前のゾンビたちが、一掃される。
「無事かよ、お嬢!」
「あなたは、アキコですか?」
なんと、メイドのアキコが加勢に来てくれた。
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