ガイコツ 対 筋肉

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ガイコツ 対 筋肉

 ゼム将軍は、瞬時にネロックの軍勢を壊滅させてしまった。  将軍側の兵隊も数を減らしている。  死体の山に向けて、将軍は詠唱した。左手に灰色の光が結集し、鬼火が舞い上がる。  鬼火が死体に取り憑いて、死体を内部から焼く。  焼かれた死体が、ムクリと起き上がった。 「歓迎しましょう、フォルテお嬢様。あなたを味方に引き入れられないのは残念だが、あなたに取り憑いた魔王の力、いただこうか」  兵士の死体がスケルトン兵となって、こちらに向かってきたではないか。 『フォトン、くるぞ!』 「問題ありません」  わたしは左手の手甲を天にかざし、アンデッドを消滅させた。 「ヒョヒョ。まだまだおかわりはありますぞ」  アンデッドの群れが、すべてわたしに殺到してくる。  さすがネクロマンサー。自分からは攻めてこないか。  一体一体の力は、それほどでもない。とはいえ、これだけの数を相手を、さばききれるか? 「ファイアーバード!」  ゾンビたちの背後から、火の鳥が迫ってきた。アンデッドをすべて、燃え盛る翼で焼き尽くす。 「無事か、フォトン!」  火の鳥を放ったのは、カチュアである。 「フォルテお嬢!」  両手剣を振り回して、アキコも参戦してきた。 「二人は周りの敵をお願いします。わたしが将軍を」 「一人で平気か、フォトン?」 「大丈夫です」  わたしは、ゼム将軍と一対一になる。 「愚かな。魔王の力を得たといえ、ワシと相対するなど」 「ゼム将軍、お覚悟を」  質量を持ったファイアーボールを、ロッドの先端に込めた。ゼム将軍へと、振り下ろす。 「あなたに、ワシが倒せますかな?」  片手のサーベルで、軽々とロッドを受け止めた。  火球が爆発し、将軍の視界を奪う。 「アイス・リーパーッ!」  わたしは火球を氷のカマに変換し、ゼム将軍の左腕を切った。  将軍の左腕が、ボトリと落ちる。手に持っていた鬼火が、フッと消えた。 「ぐう!」  同時に、将軍が操っていたゾンビやスケルトンが、砂と化す。 「おお、モンスターが消滅したぞ!」  戦場を覆い尽くすほどにいた魔物たちが、一瞬でいなくなった。 「これでもう、アンデッドを喚び出すことはできません」 「ほお。味なマネをなさる」  配下を失ったというのに、将軍はまだ余裕の表情である。 「その傲慢さを、後悔させてくれる! くらえファイアーバード!」  カチュアが、将軍に向けて火の鳥を放った。 「地獄の業火に比べれば、こんなもの!」  ゼム将軍は、サーベルを振り回しただけで火の鳥を蹴散らす。 「なんと。私の最大の技を」 「この程度が最終奥義ですか。プロイの姫騎士も、大したものではありませんな。死ねい!」  サーベルで、ゼム将軍はカチュアの心臓を突こうとした。  ロッドを振り、ゼム将軍のサーベルを弾き返す。 「あなたの相手は、わたしです」
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