女心はいつまでも

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 ……という話を、火葬場の待合室でじいちゃん(ひいばあちゃんの長男)に話すと、じいちゃんは「確かにそれじゃモテねぇな!」と爆笑し、そのまま一頻り笑い転げた後で、そういえば、と、こんな昔話を俺に打ち明けてくれた。  それは、じいちゃんが中学に上がったばかりの頃のこと。その頃はまだひいばあちゃんも桜を避けるなんてことはなく、むしろ毎年三月の末頃になると、家族みんなで花見に出かけてさえいた。その日もひいばあちゃんは花見のための料理を作っていたのだけど、ふと思い立ったように手帳から一枚の写真を取り出し、それをじいちゃんに見せて言ったそうだ。  ――この人、誰だかわかるかい。  それは古い結婚写真で、ひいばあちゃんは花嫁の方を指しながらそう尋ねてきたらしい。じいちゃんは、綺麗な女性だなとは思っても、それが母親の若かりし頃の姿だとは思わなかったそうだ。なので正直に「いや」と答えると、途端にひいばあちゃんは塞ぎ込み、花見はお父さんとだけで行ってくれ、と言った。  それ以来、ひいばあちゃんが家族と花見に出かけることはなかった。 「え……? じゃあそれが、ひいばあちゃんが桜を嫌うようになったきっかけ、ってこと?」 「それ以外に何があるってんだよ。いや可愛い話じゃねぇか。自分のおふくろに可愛いもへったくれもねえんだが」  一人合点し、ニヤニヤと笑うじいちゃん。だが、例によって非モテの俺には何が面白いのかわからない。 「いや……だから、何で?」  するとじいちゃんは今度こそ本気で呆れた。 「じゃあ逆に聞くが、お前――
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