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願い
「ふう…終わった…」
ヒーロー()が言った。
俺も心底疲れていた。
いやお前は敵に突っ込んでいっただけだろとツッコミが入りそうだが、ご存知の通り、俺は自宅警備員なので体力はほぼないといってもいい。
「プレイヤー諸君、お疲れ気味のようだな。この程度でへこたれるとは体力がほぼ0に近いんじゃないか?」
急にめちゃくちゃ嫌味を言ってくるノロイ。
「あ゛?」
宝がキレ気味の声で言った。
「ちょ…ノロイさんに喧嘩を売るのはやめてくださいね…」
新美がなだめるような口調で言った。
ノロイに対してさん付けか?(((殴
「まあ、どちらにせよ疲れているようだな。よし、少し休憩をとってやろう。俺の優しさだ、感謝しろ。あと、水と食べ物も用意してやる。その他欲しいものがあったら、"無いと命に関わるもの"限定で支給してやる。腕につけているスマホで注文しろ。いや、俺やっさしぃィィィィ!!!」
こいつ、自画自賛タイプか…
そんなことより、ゲーミングpcをください!命に関わります!禁断症状が出てしまいます!自宅警備員必須アイテムがないと生きていけません!
エマージェンシー!((((((殴
「ゲーミングpcをよこせぇぇぇぇ」
…おんなじことを考えているやつが隣にいた。
「ああああくそぉぉぉぉぉ命に関わるものなのにぃぃぃぃぃ」
…どうやら無理なようだ…まあ分かっていたことだが…
「あの…この際ですし、少しお話しませんか…?」
「ああ、そうだな!まだあんまりお互いのことを知れてないしな!宝もいいよな!」
「構わん。」
「潤も!」
「ああ…いいぞ」
今更このコミュ症にどんな話をしろと???
構わずヒーロー()は続ける。
「じゃあ、みんなはなんでこのデスゲームに参加したんだ?」
「どゆこと」
―相変わらず宝はノリが軽いな…
「えーっと…じゃあ聞き方を変えるわ。みんなはどんな願いがあって、このデスゲームに参加したんだ?」
「あーね」
宝は一旦無視してと…
てか、普通にこれヤバくないか?ここまできて「死ぬことでーす」なんか言えねぇし…
適当に嘘つくか。
「じゃあ、提案した俺から行くか!俺の願いは、世界のヒーローになることだ!全世界から慕われるような超偉大な人物になること!」
…まあ、ヒーロー()らしいっちゃらしい。言っちゃうと普通だ。
「んじゃ次、宝」
「私か?私の願いは、更に強いやつと戦うことだ。武に終わりはない。ひたすら極めるに限る。」
…宝はこの辺のしっかりさと応答の適当さがごっちゃでよくわからん。
あとそこそこかっこいいこと言ってんじゃねえよ((殴
「じゃ、次は新美!よろしく」
「あ…はい!私の願いは…真っ当な生活がしたいです。これまでの人生、ろくなことがなかったので、ちょっとはまともな人生を送りたいと思ったので…」
ふーん。そーなんだー。
はっきり言ってあんまり興味無い。
まあ、誰に対しても興味なんて無いが。
だが、ヒーロー()は興味津々に、
「新美さんの過去!?気になるなあー!!!」
「いや…話したくないです…」
「いやいやいや!別に言いじゃん!」
「やめろ。嫌がっているだろう。」
思わず強めの口調で言ってしまった。
それに対しヒーロー()は口をとがらせながら、
「うーん…仕方ないなー…じゃあそんなことをいう潤で!」
―まあ、後俺しかいないんだが…
「俺の願いは、一生自分の好きなことをしたい、だ。」
「あーまあそうだよねースタンダードな願いだな!」
だってえー!お前がそんなことを提案するからだろおー!?
そんなことを思っているとき、宝が真剣な表情で俺の方を見ていることには―無論、俺自身も含め―誰も気づいていなかった…
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