出ていけ

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出ていけ

その後のことは、書きたくもない。 一言一句取りこぼさず書こうとすると、俺が吐き気を催してしまう。 真面目に俺はこんな形で死にたくはないため、簡単に、本当に簡単に記させていただく。 結局、あの迷路の中で、折原は新美に告白をした。 いいチャンスだとでも思ったのだろう。 当然のごとく新美は拒否をした。だが、折原は引かなかった。 自分の愛の深さを一方的に語り、屁理屈だらけの主張を並べたてたという。 それに対しても、新美は一刀両断。ひたすら拒否をした。 しばらくはそれの繰り返し。だが、ついに折原が強硬手段に出た。 折原は性行為を求めてきたというのだ。言うまでもなく新美は拒否。 当然だ。告白すら拒否されているというのに、性行為が了承されるはずがない。 その当然の結果に、(なぜか)折原はプッツンした。そして、性行為を強要してきたのだ。 もちろん、これは立派な犯罪である。 刑法第百七十七条 強制性交等罪にあたり、五年以上の有期懲役に処される。 だが、今はそんな事を言ってもたいして意味はない。 なぜなら、いま自分たちが置かれている状況自体がいろんな法に触れまくるからだ。(って、別に説明しなくても分かるか) ともかく、その事実を俺は新美に言われる前から察し、怒り狂った。 もはや声に出すような言葉もないほど怒りが溢れていた。 それは、声に出さずとも分かるというものだったかもしれない。 「折原…なぜそんなことをする…」 俺と同じく怒りを覚えている宝が言った。 「だってー?好きなんだからさー?ちょっとぐらいよくね?」 「いいわけがないだろう…?」 「ちょっとだよ!ほんのちょーっとだけしよって言ったんだよ!それなのに新美は何を勘違いしてんだかギャン泣きしちゃってさー?俺の立場も考えてくれっての!」 本当に親の顔が見てみたい。どうすればこんなクソガキが育つのだろうか。 どうせ、新美に言った「自分の愛の深さ」もこんな屁理屈まみれのしょうもない語りだったんだろう。ただただ新美が可哀想だ。 「いい加減にしろ…折原…お前は心底絶望した…このパーティーを抜けろ…」 「やだねー」 「抜けろといっているだろう!!」 宝が今までにないほど強い口調で言う。それでも折原は、 「なんでそんなにキレんだよ!別に俺悪くないじゃん!新美が勝手に泣いてるだけじゃん!」 と、まだ屁理屈を言っている。 ―このままじゃ、永遠に終わる気がしないな… と、怒りを超えてもはや呆れに到達している俺がそう思っていると、 「…終わりにしてください」 「新美なんて?」 「もう屁理屈ばかり並べ立てるのは終わりにしてください!」 ついに新美が自分の心の内をさらけ出した。 「初めはいい人だと思っていたのに、裏を返せばこんなに下劣で、馬鹿で、 クズで、ゴミで、下等種だとは思いませんでした!とても最悪な気分です! 今すぐこのパーティーを出ていってください!出ていけこのイキリキッズ!」
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