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主催者
ひとまず俺は、周りを見渡すことにした。もはや周りを見渡すことすら気だるく感じてしまうようになった。それはこの空間に来たからではなく、もっと前からそうなってしまった。
理由は明白で、俺は引きこもりだからだ。別段ひどいいじめを受けていたわけではない。ただ、何となく人生に飽きて、生きていることに意味を見出せなくなってしまったからそうなってしまった訳で、深い理由はない。
そんなことを考えながら周りを見渡していると、この空間の様子が分かってきた。とりあえずこの空間には自分一人しかいない。
そして、自分が今座っているベッド以外に物はない。空間は全体が黒と銀が混ざったような、いわゆる刑務所などの檻の格子のような色だ。それもあってか、空間全体が薄暗くなっている。
常人ならこんな空間にいたら吐き気がしてたまらないだろうが、自分は常人ではないことを自分で理解しているし、普段から比較的暗い空間にいるので、別に何も感じない。
それはともかく、一旦自分の服装を確認してみた。いつもの服装だ。
― 腕についた見慣れないスマホアームバンドとそれに入っているスマホ以外は。
―何だこれは?
さっきから疑問しか浮かんでこないが仕方ない。
とりあえず触ってみることにした。
スマホに手を触れた瞬間!
………何も起きなかった。
電源ボタンっぽいところがあったので押してみた。すると、
”コードNo.1229の指紋を認証しました”
という機械音声とともにスマホの画面が明るくなった。
「これは…アプリか?」
スマホの画面にあったのはいくつかのアプリ。
電話、メール、設定、カメラ、アルバム、それに…
「ゲーム関連内容?」
ハテナが頭をぐるぐると回る。
本当に訳がわからない。
考えてばかりいても仕方がないと、行動に移ることにした。
「ゲーム関連内容」と書かれたアプリをタップした。
すると、待つ暇もなくアプリが開いた。
開いたタブにはただ一つだけ項目があった。
「公式からのお知らせ?」
俺はいよいよこんなことを考えだした。
「これじゃまるでデスゲームの始まりみたいじゃないか」
思わず声に出してしまいながら、一つだけの項目をタップした。
すると、突然、何もなかった壁にテレビモニターのようなものが現れた。
当たり前のように勝手にテレビがつき、顔が現れた。
顔は当然というように仮面を被っていた。
突然のことに戸惑いながらも、俺は興奮していた。
「本当にデスゲームなんじゃないか?!」
すると、テレビから声がした。
「ああそのとおりだよNo.1229。これはデスゲームだ。」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
あまりの気迫に仮面の男も少したじろいだようだが、怯まず言葉を続けた。
「なんだ、デスゲームに参加できて嬉しいのか?そんなやつ初めて見たが…
まあいい。そんなに喜んでいられるのも今のうちだ。」
仮面の男がこんなふうに言葉をかけている間にも俺はずっと興奮の中にいた。
だってやばいだろ!!デスゲームだぜ?!最高じゃないか!!
それに気づかず、仮面の男は話し続ける。
「おっと、私の名前を言い忘れたな。私はノロイ。このデスゲームの主催者だ。まあ、もちろんこれが本名ではないが、個人的に気に入ってるニックネームなのでそう呼んでほしい。」
そんなことお構いなしにと、俺は話しかける。
「ねえ、ノロイさん!いやもはやノロイ様!デスゲーム早く始めてよ!!」
おもちゃ屋さんでほしいおもちゃをみつけて親に欲しいと懇願している子供のような口調で言う。
そんな姿に仮面の男―ノロイはさすがにたじろぎ、
「あ、ああ、そうだな…」と、押され気味の口調で言った。
ようやく、俺の願いが叶えられるんじゃないか!?と思う俺であった…
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