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能力
「では、そろそろ始めようか」
ノロイが唐突に始まりを告げた。
「まずはその扉から出てもらおう」
ノロイが指を指した方向を見ると、そこには扉があった。そう、始め見たときは無かったはずの扉が。
「うおおおおおおお!!すげぇぇぇぇぇ!!」
俺はここにも興奮した。ノロイはいい加減にしてくれというふうな顔をしている。
「遂に始まりじゃん!!この扉開けたらいっぱい参加者いるやつじゃん!!」
「いいからさっさと出ろ」
ノロイがいよいよしびれを切らしたように言った。
さすがにこれ以上騒いでいたらノロイに本気で怒られるかもしれないと思い、外に出ることにした。
扉を開けると、そこには自分が想像しているよりも多くの参加者がいた。
確かに、よく考えると、自分のコードNo.は1229なので、それ未満―1228人が少なからずいるはずだ。だからこの数も妥当っちゃ妥当…と思ったところに早くもおなじみになったノロイの姿がホログラムで映し出された。
「皆の衆、おはよう。先程も会ったが改めて自己紹介しておこう。私はノロイ。このデスゲームの主催者だ。みんなにはこれから、命を懸けてゲームをしてもらう。このゲームがなぜ行われるか、などは自分が一番分かっているだろう。」
辺りからどよめきが起こった。そんなの知らないぞ!という声さえ聞こえてきた。ノロイは呆れたように言った。
「自分で応募しただろう?ゲームで勝利を掴み取るとなんでも願いが叶うっていうやつに」
………先程と一転して、辺りは沈黙が漂った。
「ほら、心当たりがあるだろう?もちろん、その応募に嘘はないさ。今からやるのはゲームだし、勝利を掴み取ればなんでも願いが叶う」
また辺りからどよめきが起こった。…忙しい聴衆だな。
「もちろん、ゲームの進行を妨害するような行為は禁止だ。妨害行為を行った場合…まあ、いうまでもないか」と、ノロイは途中で止めた。
「一応言っておくけど、死ぬ。」
―ここでデスゲーム漫画の定番は…
俺はデスゲーム漫画でありがちな行動をとった。
「そんなのあり得るわけないじゃないか!!俺はこんなくだらないゲームに付き合っている暇はないんだ!!」
そう!デスゲーム漫画でありがちな、「一番最初に主催者に楯突いて速攻で残酷な殺され方をするやつ」!!
この行動を取ることによって………
俺の願い、すなわち死ぬことが強制実行される!!
「お前は…No.1229か…ゲームの進行を妨害するような行為は禁止だとつい先程言ったはずだ…妨害行為を行った場合…どうなるか言ったよな?」
「はっ、死ぬんだろ?あり得ねぇんだよ!!第一、お前は見たところホログラムじゃねぇか!!そんな状況でどうやって俺を殺すっていうんだよ!!」
「ふん…少々私を怒らせたようだ…お前には制裁を下そうじゃないか…」
キタキタキター!!!内心興奮しまくりながら最高な状況に向き合っていた。
このままいったら確実に1000%死ぬ!!神だ!!
その時、ウオオオという腹に響く重低音とともに、怪物が現れた。
紫色をした、化け物だ。こういうときはなにかの動物に例えるのだろうが、
例えが思い浮かばない。適当に想像していただけると助かる。
そいつと俺の目が―――あった。
その瞬間、俺の方へダッと駆け出したと思った次には、もう俺の目の前にいた。
ああ………遂に死か………ようやくこのくだらない人生から開放される………
目を閉じながらそう思った次には、気が遠のいていった………
はずだった。閉じていた目を開けると目の前には怪物に腹を貫かれた一人の女がいた。
「死ぬ…チャンス…つくって…くれて…あり…がとう」
………はぁ?
思わず声が出そうになった。死ぬチャンス?こっちは死にたくてこんなことをしたんだが??
「ずっと…死にたかった…けど…どうせ…死ぬ…なら…人の…役に…立って…から…死のうと…思った…だから…お礼は…いら…ない…よ…」
いやいやいや!!お礼なんてするわけ無いだろ?!勝手に俺と同じ願い持ちながら、「自分命懸けで人救ったったwwやっぱ私イケてるわーww」とか思ってんだろ?!てかいつまで喋ってんだよ!!さっさと死ぬなら死ねや!!ふざけんなよ!!デスゲームでも結局こうなるのかよ!!
―そう、最初に俺の願いが「死ぬこと」だったと聞いた時、不思議に思った人もいるかも知れない。死にたいんだったらチャンスなんていくらでもあるんじゃないか?って。もちろん、死にたいなら自殺をすればいい。でも、出来ない。どんな方法を試しても、死ぬことが出来ないんだ。
そう、俺―影山潤は「幸運すぎて様々な生死に関わるような出来事を意思に関係なくかいくぐれる能力」の持ち主なのだ。
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