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銃
俺はヒーロー笑(折原聖一)に言われた方向に行った。
そこには、銃が無造作にポンッと置かれていた。
それを手に取ると、後ろから声がした。
「よし、それで準備は万端だな!」
ヒーロー(笑)の元気の良い声がした。
―今更だが、こいつ高校生のくせに大人にタメ口だ。
親の教育がなってないのでは?と、自分のことを棚に上げて思う。
「さあ、その銃であいつらを蹴散らしてやれ!」
…てかこれ弾入ってんのか?その考えを読み取ったように、
「弾はなんか知らんけど、はいってる」
といった。うっざ
………あ。俺天才かもしれん。この銃で自分のこと撃ったらいいじゃん!
やっぱ俺天才だわー!!と自画自賛に浸っていると、
「速くしろ!」と言われた。
はいはい速く死にますよーwwwとか思いながら銃口を自分に向け、引き金を引いた。
パァン!!という銃声が………
響かなかった。
………うん?
もう一度やってみるか…
引き金を引く!
カチャ。………乾いた音が響くのみ。
………ゑ?
連続で!
カチャカチャカチャ。悲しく響く音。
そしてようやく気づいた。これ多分ストッパーかかってるわ。
そのとき、ヒーロー(笑)が言った。
「あ、最初撃つときはストッパーかかってるからはずせよー」
言うのが遅えわこのクソガキ!!
………あ、でも冷静に考えたらストッパー外せばいいじゃん。
「ストッパーは」「分かるよ」
「………え?」「ストッパーの位置ぐらい分かる」
ったく、俺がどれだけ死にたいと思ってるんだ。
武器凶器ぐらいだいたい構造は理解しているつもりだ。
「………まあ、わかるんならいいか。よし!じゃあそれで今度こそあいつらを蹴散らしてやれ!」
よし、ようやく死ねる。
今度こそ銃口を自分に向け、引き金を引いた!
パァン!という音が今度こそした。よし、これで俺の人生は終わりだ!
だが、死ぬ気配がないどころか、痛みすら感じない。人間が死にかけのときに痛みすら感じない描写を漫画で見たことがあるが、そういうわけでもない。
その証拠に、自分の体を見ても、傷はない。
その代わりに感じたのは、地面が背中に勢いよくついた衝撃だ。
そして、「ごめんなさい、ごめんなさい!」と謝り倒す高い声。
声がする方向を見ると、そこには成人したてのような姿をした女がいた。
―絶対死ねそうなところでも幸運スキルは発動するのか…
まさかとは思ったがやはりそのとおりのようだ。
「怪物に追われていたもので!一心不乱に走っていたのでぶつかってしまいました!本当に申し訳ございませんでした!!」
「あ、別に大丈夫ですよ…」
「本当ですか!」
女は涙目の顔を上げ、歓喜の表情をした。………意外と可愛いことに腹が立つ。
「私、新美千愛(にいみちあき)って言います!もしよかったら、一緒に戦いませんか?」
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