20人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
宝
ステージについた瞬間、目の前には怪物がいた。
見たことのない敵だ。例えるなら、"亀"だろうか。
のっそのっそとこちらに向かってくる。到底俺たちが走れば追いつけるとは思えないほどの速さだ。
ただ、ノロイが言ったように、防御力の高そうな頑丈そうな甲羅を背に抱えている。
―こいつは殺されるのには向いてないかな…
まだそんなことを考えているのかと言われそうだが、そもそも俺は死にたいので、当然だ。まあ、常人には理解できないだろう。
そんなことを言っているうちに、紫の怪物―ノロイ曰く敵コードNo.001―が姿を現した。
―おっ、きたきたー
軽めのノリで思いながら俺は、ヒーロー(笑)に、
「ここは俺が先に行く」
と、めちゃくちゃ頼りになりそうな事を言った。
「お、そうか!分かった!銃は…持ってるな!じゃあ、行ってこい!お前の実力を見せてみろ!」
―本当に親の顔が見てみたい。どんな育て方をしたらこんなに目上の人に対して口が悪くなるのだろうか。
ま、ヒーロー(笑)と新美には悪いが、ここで俺は"脱落"させていただくぜ。
そう思い、おれは銃を持ちながら、敵に突っ込んでいった。
―狙いは一番紫の怪物が多いところだ。この際何が起こるかわからないので、走りながら俺は銃口を自分に向けていた。
敵が俺に気づいた。いつか聞いた覚えのあるうめき声を上げながら、
おれに大勢で向かってきた。
―さあ、いよいよ終わりだ!
もちろん、襲われたと思ったと同時に引き金を引く。言うまでもないが、安全装置は外しているからな。
そして、その時が来た。
俺は怪物の波に飲まれ、怪物の鋭い爪が俺に刺さるのを感じた。それと同時に、おれは引き金を引いた。
―これで、俺は終わりだ!さらば、このくだらない人生!
なのにだ。
やっぱりここでも幸運スキルは発動した。
気づいたときには、怪物の鋭い爪は怪物の腕と離れており、俺の目の前で転がっていた。
銃はというと…弾切れだ。確かに、安全装置は外した。だが、弾が残っているか、は確認していなかった。最悪だ。今日は最悪が何度も来る日だ。
それよりも、俺が気になるのは、なぜ、怪物の鋭い爪は怪物の腕から離れているのかだ。
俺は嫌な予感もよく的中するらしい。横を見ると、そこにはまるで武士のように腰に刀を差し(しかもやけに似合う)、いつも武芸に励んでそうな男がいた。
その男が、
「大丈夫か?急に敵に突っ込むのは阿呆のすることだ。私がいなければ、今頃死んでいただろう。ありがたく思え。」
―イヤ、ワタシハシニタカッタンデスケド…
人の命を救ったやつは、褒められたいのだろうか。自慢ばっかしてくる。
「おっと、私の名を名乗っていなかったな。
私の名は、矢藤宝(やとうたから)だ。」
最初のコメントを投稿しよう!