林檎様

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「どこ行くの?」 俺は聞いた。そして兄は答えた。 「山に少し用事があってさ。 二時間くらいしたら帰ってくるから昭は米研いで炊いといて。」 そして兄は家を出た。 母親は二日前おかしくなり、ずっと寝込んだままだった。 俺しかいない部屋は、シーンと静まり返っていた。 米を研ぎ炊いた後、少し眠たかったので、そのままソファーで眠りにおちた。 そして二時間後、兄は帰ってこなかった。 おかしいな。と思い、母に兄の居場所を聞いてみた。 「林檎様のたたりだわ...! こんな日に家を出て森に行くから林檎様に食われてしまったのよ..!」 母親は一昨日からこの調子で、父は仕事。 俺が探しに行くしかなかった。 「おーい。高久ー?」 叫んでも返事はない。 遭難の可能性は少ないようだ。 それならなにか不満があって逃げた...? いや、ないない。兄はとても優しく、親孝行な息子だったはずだ。 山を少し進み、大きな松の木があるところの前に着いた。 そして俺は兄を見つけた。が、内蔵もぐちゃぐちゃな状態で食い殺されたような跡があった。言葉がなにもでなかった。早く逃げろ。心の中の警鐘がとても鳴った。俺は必死で逃げた。玄関につき、扉を開けようとした。が、開かなかった。なんでだ。行きのときは鍵を閉めていないはずだ。 父は仕事、兄は死体。ということはこの鍵を閉め、俺が死体を見つけるということをわかっていたのは..... すると、誰かに抱きつかれた。 母だ。 「あれを見たんだね。 大丈夫だよ。林檎様は昭には攻撃しない。 だって昭は――だから。」 パニックなせいか、最後まで聞き取れなかった。 「どういうことだよ...! 高久が死んでんだよ...!」 訳がわからなかった。 兄は何をした? 林檎様って誰なんだ...!? 「大丈夫。昭は安心して寝ていいよ。」 母に言われる頃には、俺は眠りに落ちていた。
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