3人が本棚に入れています
本棚に追加
「どこ行くの?」
俺は聞いた。そして兄は答えた。
「山に少し用事があってさ。
二時間くらいしたら帰ってくるから昭は米研いで炊いといて。」
そして兄は家を出た。
母親は二日前おかしくなり、ずっと寝込んだままだった。
俺しかいない部屋は、シーンと静まり返っていた。
米を研ぎ炊いた後、少し眠たかったので、そのままソファーで眠りにおちた。
そして二時間後、兄は帰ってこなかった。
おかしいな。と思い、母に兄の居場所を聞いてみた。
「林檎様のたたりだわ...!
こんな日に家を出て森に行くから林檎様に食われてしまったのよ..!」
母親は一昨日からこの調子で、父は仕事。
俺が探しに行くしかなかった。
「おーい。高久ー?」
叫んでも返事はない。
遭難の可能性は少ないようだ。
それならなにか不満があって逃げた...?
いや、ないない。兄はとても優しく、親孝行な息子だったはずだ。
山を少し進み、大きな松の木があるところの前に着いた。
そして俺は兄を見つけた。が、内蔵もぐちゃぐちゃな状態で食い殺されたような跡があった。言葉がなにもでなかった。早く逃げろ。心の中の警鐘がとても鳴った。俺は必死で逃げた。玄関につき、扉を開けようとした。が、開かなかった。なんでだ。行きのときは鍵を閉めていないはずだ。
父は仕事、兄は死体。ということはこの鍵を閉め、俺が死体を見つけるということをわかっていたのは.....
すると、誰かに抱きつかれた。
母だ。
「あれを見たんだね。
大丈夫だよ。林檎様は昭には攻撃しない。
だって昭は――だから。」
パニックなせいか、最後まで聞き取れなかった。
「どういうことだよ...!
高久が死んでんだよ...!」
訳がわからなかった。
兄は何をした?
林檎様って誰なんだ...!?
「大丈夫。昭は安心して寝ていいよ。」
母に言われる頃には、俺は眠りに落ちていた。
最初のコメントを投稿しよう!