卵かけご飯と小鳥

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 外の景色を見て翌日になっていることに気づいた。分解したパーツを、お母さんと一緒に庭に埋めた。「おかあさんといっしょ」って、なんだか小さな子供に戻ったみたい。もう私たちの間にあるのは平和だけだった。  私が溢れ出る幸せに浸っているとき、お母さんは、 「あの人は死ぬべきだった。これでいいの」 と、自分を納得させるように言ってた。  いつまでも具体的なこと、つまり私が何をされていたかということと、お母さんが何をされていたのかということは言ってくれなかった。物心がついた頃から、私がされているのがどういうことなのか知りたかったけれど、一生誰にも言えないことなのだと悟った。  拾ってきた卵は一ヶ月経っても孵らなかった。嫌になって床に落として割ってみると、干乾(ひから)びた(ひな)の死骸があるだけだった。もしこの雛が無事に産まれてきていたら、お父さんの生まれ変わりみたいで、耐えられないほど気持ち悪かったに違いない。雛が死んでくれたことに、ささやかな感謝をした。  お母さんは口癖のように、「いつまで隠し通せるかしら」と言うけれど、今のところ見つけられる気配はない。私は一生隠し通すだろう。私は隠し事をすることだけは得意だから。
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