卵かけご飯と小鳥

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 夜になると、お父さんとお母さんが二人揃って帰ってきた。おかえりなさいと挨拶をすると、二人で夕飯を食べてきたと言う。よかった。お腹は空いていないみたいだし、まだ食べられずに済みそうだ。次の問題は、翌朝の卵かけご飯だ。お父さんは夜中にこっそり私の部屋に入ってくることがある。そのときに、卵を割ったり、盗られたりしないよう対策しなければいけない。  私は妙案を思いついた。それは盗られてもよい卵を用意するということだ。私はこの思いつきを実行するため、冷蔵庫からこっそりと卵を一つ拝借して、部屋の机の上に置いた。そして、盗られたくない方の拾ってきた卵はタンスの服の間にしまい込んだ。しかし、やってみたものの、父が夜中に部屋に来るとき、私のタンスを開けて着替えを片づけることもあるのだ。ここは隠し場所として適切ではない。そうすると意外と隠し場所がないことに気づいた。布団の中では誤って潰してしまう可能性があるし、机の引き出しでも転がって割れてしまうかもしれない。棚の上では落ちてしまうかも。そうなるとやはり机の上に置くしかない。  二つの卵を机の上に並べてみた。一つは白くて見慣れたスーパーで買う卵。もう一つは森で見つけた茶色い卵。この卵を無事に孵化させて、自由に育っていつか自然に返してあげたい。守らなくては。私はどうなってもいいから、この卵のことだけは守りたい。このたまごが絶対に食べられない物だとわかるように、食べたら死ぬようにしよう。  私は学校の実験室で手に入れた人が死ぬ薬をずっと隠し持っているのだが、それを使うべきときが来たのかもしれない。
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