卵かけご飯と小鳥

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 下着がずらされ、手が入ってくる。それ以上は頭の中の雑音として、全て忘れ去ることにしている。何もない。頭に中に残して置くべきことは何もない。自分の体を自分から切り離すように、感覚を消してしまうことができたらいいのに、私はその不快な感触に息遣いが荒くなる。  何かが終わって布団から出て行ったとき、彼が立ち止まったのを感じた。常夜灯のオレンジの明かりの中で、机の上にある2つのたまごに気づいたのだ。それは絶対に食べてはいけないたまご。私は自分の本心がどこにあるのかわからなくなっていた。まだ少し呼吸が早い。もし、卵を手に取ったらどうしよう。いや、どうすることもできない。いま、こうして眠ったふりをしているように、この体勢のまま体を強直させているしかない。  今日、卵を見つけていなかったら、私は森の中で死んでいたのかもしれない。卵を見つけたとき、私は幸せだった。そんなことが夢のようだと思う。
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