卵かけご飯と小鳥

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 再び戻った真夜中の静寂の中、私は布団に潜ったまま耳を澄ました。一階にお父さんとお母さんが居るはずだが話し声は何もしない。動きを止めて衣擦れの音も立てないようにすると、何かの電気製品のジーという微かな音だけが聞こえる。お母さんは一階で何をしているんだろう。  しばらくして足音が二階に戻って来て、私の部屋の前で立ち止まった。ノックをするのかと思ったけれど、ノックも声もしない。階段を上がってきたのはお母さんだよね? 誰かがドアの前にいる。私は寝たふりをしたまま体を動かせず、ドアの方を向くのが怖かった。もしそれがお父さんで、私のしたことに気づいていたら何と言い訳すればいいのだろう。  枕にくっつけた私の耳に血液の脈の打つ音が少しだけ大きく聞こえる。ドアの前で止まった足音は、私のことを待っているのかもしれない。私が寝たふりをしているのも知っているのかもしれない。  このまま寝てしまえば、寝たふりじゃないことにできる。寝てしまおうか? 私は自分からドアを開ける勇気なんてない。じゃあ代わりに私がドアをノックしてみたら? 私は何が起きたのか、本当は知りたい。  
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