先生はそれを遮り、ここにいていいのだと言った。

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 屋上から身を乗り出し、ざわめきの中心に目を凝らす。   地面に横たわる先生の姿は、一週間前、教室の窓から転落した女の子の最期と重なっている。  本当は、出会った時点で先生の心は死んでいた。  だから先生は、本来人の目に映るはずのない私のことを見ることができたのだろう。  そして先生は、その壊れた心であの子の代わりに私を助けようとした。  ここにいるのが辛くてそうしたはずなのに、もう少しだけここに居たいと言ったあの子。  不思議な子だと思っていた。  だけど、今ならわかる。教室に居たかったんじゃなくて、先生のそばに居たかったんだ。 「先生、行こう。あの子が待ってる」
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