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「オンアビラウンキャンシャラクタン!」 日もとっぷりと暮れた京の街で、大声をあげる少年が一人。 彼は、炎色の狩依をまとい、墨色の手甲をつけ、髪は首の後ろで一つにまとめている。 「……ふぅ、疲れたぁ」 「なんだ、バテたか?晴明の孫」 先程彼の力によって塵と化した妖怪を目の前にして、思わずへたりこむ少年、安倍昌浩に合いの手をいれたそれは、四つ足で軽やかに彼の肩に飛び乗った。 大きな猫のような体驅に白い毛並み。目は美しい夕焼け色で、勾玉のような突起が首まわりについている。 「だーかーらー、俺を孫呼ぶなっての!物の」 「もっくんとか言うなよ」 お決まりの、言い合いを道のど真ん中で、しばらく続けた二人は、さすがに疲れたのか、ぜーぜーと肩を鳴らしながら立ち上がった。 「ここで言い合いしててもしょうがない。帰るぞ」 「そだね」 意味のない言い合いを認めた二人は、帰るべき方向に体を向け、歩きだす。 この少年、昌浩はまだ見習いかつ半人前ではあるが「陰陽師」だ。今日も、希代の陰陽師であり、また自分の祖父である安倍晴明に言われ、最近都を騒がすとある妖怪を退治するため、夜の都にでた。 そこで、意外にもあっさりと出くわしたそれと一戦を交わし、さっき、無事に終えたところであった。 「帰ったらまず、じい様に報告だな。……何もいわれなきゃいいけど」 昌浩が嫌がっている、否、恐れているのは、昌浩いわく、じい様からの嫌味攻撃、だ。今までにも何かあるたびに、ことごとくそれはもう、こてんぱんに言われてきた。じい様である、晴明からするとそれは、愛情の裏返しであるらしいが、昌浩からすると自分へのいじめ以外の何ものでもない。 「まぁ、今回はそんなにてこずらなかったし、大丈夫だろ」 「……だといいけど」
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