桜の約束

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「今年も一緒に桜を見ようね」 病室の窓から中庭を眺めながら、君は僕に笑顔で話しかける。 看護婦さんが春になると中庭の桜が綺麗だと教えてくれたらしい。 僕は君の肩にタオルケットを掛けながら絶対に見ようと約束をした。 君は嬉しそうな顔は今でも瞼に焼き付いている。 大好きな君との最後の約束は、例年よりも遅い開花のせいで叶わなかった。   僕を不甲斐ない男にした桜 僕に大切な人との約束を破らせた桜 君に「ごめんね」と謝らせた桜 それでも君が好きだった花だから、僕は今年も一人で桜を見に行く。 微かに香る桜の匂いに思わず君を探してしまうし、はらはらと舞う桜の花びらがキラキラと眩しくて僕は涙を零してしまうけど。 満開に咲く大嫌いな桜の下で今年も、桜が大好きだった君を思う。 彼のために咲かなかった桜は今年も変わらずにきれいだった。
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