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9 舞踊クラス……?
「1、2、3、4〜〜5、6、7〜〜〜8」
桃中、一階の体育館。熱気がすごくて、五月なのに蒸し暑い。
「眼鏡ちゃん〜!もっと前伸びれるよ〜!」
前髪を全開にあげたお団子の先輩が、柚花ちゃんにハッパをかける。
「む、無理ですっ!痛いっ!足ちぎれるっ!」
柚花ちゃんは真っ赤な顔で先輩たちに猛抗議。
「柚花ちゃん、息吐いて!リラックスして、ぐいっと前へ!」
私は、制服のまま開脚でビヨーンと前へ進みながら、柚花ちゃんを見る。
「リ、リラックス?……ふう。………………ぎゃあっ!めちゃくちゃ押されたっ!痛いいいい!」
起き上がってきた柚花ちゃんを見て、私はあははっと笑っちゃった。
美術クラスの次は、舞踊クラス。
活動場所は体育館らしいから、三人で体育館に移動したんだ。
クラス長の踊子先輩に芸術発表会の質問をしたら、クラスメイト満場一致の参加希望。
質問はすぐに終わったんだ。
そしたら、踊子先輩が一緒に踊ってこうよ!と誘ってくれて。
ダンス好きな私としてはノリノリだったけど、運動音痴らしい千鶴先輩と柚花ちゃんは顔をひきつらせてた。
「で、でも、明日の中間発表準備で忙しいでしょ?」
「いやぁ、そんなにガツガツ一本通しても疲れるだけですし?せっかくなので、柔軟からいきましょー!」
…………で、この状態になったんだ!
「真維ちゃん、体柔らかくない……?関節どうなってるの……」
柚花ちゃんが床に寝っ転がったまま、荒い息をついてる。
スカートぐちゃぐちゃだけど、まぁこの舞踊クラスは男子いないし、大丈夫だろう。
私は広げた足を戻して、ニッと笑ってみせた。
「私、三歳からバレエとヒップホップ習ってたんだっ。だから、柔軟は小さい頃から今も毎日やってるの!」
バレエは柔軟性が命だから、毎日の柔軟が基本。
ヒップホップでも、筋トレや体幹トレーニングとか、基礎トレもよくするしね!
「すごーい!じゃあ、来年の舞踊クラスが楽しみだっ」
私の柔軟のペアをしてくれた先輩が、明るく笑ってくれた。
柚花ちゃんは、まだ荒い息のまま先輩たちを見上げる。
「私、舞踊クラスって、アイドルが踊ってるようなダンスするんだと思ってました」
「あー。そーゆーのはたまに文化祭でやるかな?だけど、いつもはコンテンポラリーダンスっていって、創作ダンスみたいなのをするんだ。だから柔軟もやるし、基礎練はバレエやってた先生から教わるの」
柚花ちゃんのペアだった先輩が、分かりやすく教えてくれる。
私は目をキラキラ輝かせた。
「バーレッスンもやったりしますかっ?」
「うんっ。さっきもやったよ」
「わーっ!来年、このクラス来れたら楽しみ……!」
どんどんテンションが上がっていく私と反対に、柚花ちゃんはどんどん首が傾いていく。
「その、なんとかレッスンってなに……」
「あはは。気になるなら、来年舞踊クラスへおいで」
「絶対来ませんっ!」
柚花ちゃんの即答に、先輩たちは楽しそうに笑い合う。
「会長さんも、だいぶ苦戦したみたいだね」
ペアの先輩の苦笑いの声で千鶴先輩の方を見ると、踊子先輩がヘロヘロの千鶴先輩を立ち上がらせようと、腕を引っ張ってる。
「…………た、大変ですね」
私と柚花ちゃんも、踊子先輩のもとへ走った。
千鶴先輩は座り込んだ姿勢のまま、目で助けを求める。
「ま、真維……、腕引っ張って……。力入んない……。柚花は、反対の腕……」
千鶴先輩の、瀕死の言葉。
それに、千鶴先輩の可愛いお顔が、見事に死んでるよ!
「「あ、はいっ」」
私と柚花ちゃんはお互いに「「せーのっ」」と千鶴先輩を引っ張り上げた。
立ち上がった千鶴先輩は、スカートを直した後、ボサボサの髪の毛に手を当て、苦笑い。
「ありがと……。真維はまだしも、柚花は復帰が早いね……。さすが若者……」
千鶴先輩のおばあちゃんじみたセリフに、私たちは大笑いしちゃった。
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