9 舞踊クラス……?

1/1
前へ
/23ページ
次へ

9 舞踊クラス……?

「1、2、3、4〜〜5、6、7〜〜〜8」 桃中、一階の体育館。熱気がすごくて、五月なのに蒸し暑い。 「眼鏡ちゃん〜!もっと前伸びれるよ〜!」 前髪を全開にあげたお団子の先輩が、柚花ちゃんにハッパをかける。 「む、無理ですっ!痛いっ!足ちぎれるっ!」 柚花ちゃんは真っ赤な顔で先輩たちに猛抗議。 「柚花ちゃん、息吐いて!リラックスして、ぐいっと前へ!」 私は、制服のまま開脚でビヨーンと前へ進みながら、柚花ちゃんを見る。 「リ、リラックス?……ふう。………………ぎゃあっ!めちゃくちゃ押されたっ!痛いいいい!」 起き上がってきた柚花ちゃんを見て、私はあははっと笑っちゃった。 美術クラスの次は、舞踊クラス。 活動場所は体育館らしいから、三人で体育館に移動したんだ。 クラス長の踊子(ようこ)先輩に芸術発表会の質問をしたら、クラスメイト満場一致の参加希望。 質問はすぐに終わったんだ。 そしたら、踊子先輩が一緒に踊ってこうよ!と誘ってくれて。 ダンス好きな私としてはノリノリだったけど、運動音痴らしい千鶴先輩と柚花ちゃんは顔をひきつらせてた。 「で、でも、明日の中間発表準備で忙しいでしょ?」 「いやぁ、そんなにガツガツ一本通しても疲れるだけですし?せっかくなので、柔軟からいきましょー!」 …………で、この状態になったんだ! 「真維ちゃん、体柔らかくない……?関節どうなってるの……」 柚花ちゃんが床に寝っ転がったまま、荒い息をついてる。 スカートぐちゃぐちゃだけど、まぁこの舞踊クラスは男子いないし、大丈夫だろう。 私は広げた足を戻して、ニッと笑ってみせた。 「私、三歳からバレエとヒップホップ習ってたんだっ。だから、柔軟は小さい頃から今も毎日やってるの!」 バレエは柔軟性が命だから、毎日の柔軟が基本。 ヒップホップでも、筋トレや体幹トレーニングとか、基礎トレもよくするしね! 「すごーい!じゃあ、来年の舞踊クラスが楽しみだっ」 私の柔軟のペアをしてくれた先輩が、明るく笑ってくれた。 柚花ちゃんは、まだ荒い息のまま先輩たちを見上げる。 「私、舞踊クラスって、アイドルが踊ってるようなダンスするんだと思ってました」 「あー。そーゆーのはたまに文化祭でやるかな?だけど、いつもはコンテンポラリーダンスっていって、創作ダンスみたいなのをするんだ。だから柔軟もやるし、基礎練はバレエやってた先生から教わるの」 柚花ちゃんのペアだった先輩が、分かりやすく教えてくれる。 私は目をキラキラ輝かせた。 「バーレッスンもやったりしますかっ?」 「うんっ。さっきもやったよ」 「わーっ!来年、このクラス来れたら楽しみ……!」 どんどんテンションが上がっていく私と反対に、柚花ちゃんはどんどん首が傾いていく。 「その、なんとかレッスンってなに……」 「あはは。気になるなら、来年舞踊クラスへおいで」 「絶対来ませんっ!」 柚花ちゃんの即答に、先輩たちは楽しそうに笑い合う。 「会長さんも、だいぶ苦戦したみたいだね」 ペアの先輩の苦笑いの声で千鶴先輩の方を見ると、踊子先輩がヘロヘロの千鶴先輩を立ち上がらせようと、腕を引っ張ってる。 「…………た、大変ですね」 私と柚花ちゃんも、踊子先輩のもとへ走った。 千鶴先輩は座り込んだ姿勢のまま、目で助けを求める。 「ま、真維……、腕引っ張って……。力入んない……。柚花は、反対の腕……」 千鶴先輩の、瀕死の言葉。 それに、千鶴先輩の可愛いお顔が、見事に死んでるよ! 「「あ、はいっ」」 私と柚花ちゃんはお互いに「「せーのっ」」と千鶴先輩を引っ張り上げた。 立ち上がった千鶴先輩は、スカートを直した後、ボサボサの髪の毛に手を当て、苦笑い。 「ありがと……。真維はまだしも、柚花は復帰が早いね……。さすが若者……」 千鶴先輩のおばあちゃんじみたセリフに、私たちは大笑いしちゃった。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加