交錯する思い

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振り向くと、そこに立っていたのは雪之丞で。 「……はーぁ。ほんっと、やんなるなぁ」 大きなため息を吐いて、雪之丞はぽつりと小さく言葉を漏らした。 「え? 何か言った?」 「……ううん。なんでもない」 だが、それは独り言のように小さかった為、誰の耳にも届く事はなく、雪之丞は何でもないと小さく首を振り何処か切ない表情で蓮の顔を見た後、去って行った。 「……?」 「オッサンの鈍感さは、スカイツリー並みだね。ある意味すげーわ。尊敬する」 背後で一部始終を見ていた東海が、やれやれと肩をすくめる。 「あんま人前でいちゃ付いてると、ガチでスクープ抜かれるかもだから気を付けた方がいいぜ」 「スクープって、まさか。そんな大げさな」 「はー。オッサン、マジ? ほんっと、なんも知らねぇのな」 心の底から信じられないと言う顔で、東海にまじまじと見つめられ、何の事だと首を傾げる。そんな蓮の様子を見て、東海の口から更に深いため息が漏れた。 本当にこの男は、自分の置かれている状況がわかっていないとでも言いたげな態度に若干イライラが募る。 「あのさぁ、アンタらの動画結構バズって大変だったんだよね。まぁ、騒いでんのはほんの一部の大きいお姉さんたちなんだけど。その後に公開した草薙君の動画の効果も相まって、視聴率はうなぎ登りって話だし」 「え……」 「まぁ、視聴率アップって面で言えば、当初の目的どうりなわけだしいいんだけどさ……、同時にマスゴミに狙われる対象になりやすいって事は覚えておきなよ」 確かに、さっきも動画を投稿した直後から蓮たちの事を探ろうとする輩がかなり増えたとナギがぼやいていたような気がする。 個人の性癖に口を出すなと言ったって、そんなのお構いなしに面白おかしく叩くのがマスコミだ。 目を付けられているのだとしたら、確かに気を付けなくてはいけない。 「そうだったのか。……うん、肝に銘じておくよ。ありがとうはるみん」 「別に。アンタの為じゃない……。せっかく頑張ってんのに変なスキャンダルで注目浴びるのは不本意だし、アイツが絶対悲しむから……」 最後は消え入りそうな声でブツブツと文句を言いながら、ふいっと視線を逸らし蓮が口を開く前に走ってスタジオへと行ってしまった。 なんだかんだいっても、結局のところ面倒見のいい男なのだ。 少しだけ微笑ましく思いながらも、自分も早く向かわなければと足を早めた。
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