破廉知

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算数の問題を間違えることが恥ずかしくてたまらないというのに、なぜか教室で裸で踊ることをはずかしいとは思わない。なぜ皆は局部を隠そうとするのだろうか。プールの着替えを、タオルを巻いてモゾモゾすることのなんともどかしいことか。どこぞの海外のイカれたミュージシャンのように、服をぬぎすてて、裸で踊りたい。九九など覚えていられない。数式に意味を求める人の滑稽さと、美しくノートに踊る数式の対比は、あるいはその落差故に人はみずからの破廉恥さに気がつかない。圧倒的に大きなものの姿を知るむつかしさよ。地面に触れたところで、丸みを感じることなどありえない。矮小な僕にできることなど、九九の暗唱をBGMに服を脱ぎ捨てることだけだ。僕は直に数式に触れていたい。僕らの愛の儀式をガキどもの悲鳴さえ後押しする。僕はブリーフを下ろし、魔法陣のように無機質な美しさを称える数式のうえでステップを踏む。もはや羞恥心などこの恋を掻き立てるスパイスに過ぎず、囃し立てるガキと呆然と立ち尽くす担任を置き去りに、僕は踊り狂う。人は僕を壊れているとおもうか。しかし、故に僕は美しい。
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