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前輪でダライララの死体に向けて掲げられたフォークをはね飛ばす。
「グラのフォークうううう!!!」
ドリフトで強引にバイクを止めて、乗り捨てると僕はグラトニーに駆け寄った。
「生で食べちゃ駄目って言ってるでしょ!!!
お兄ちゃん怒るよ!!!
お腹壊したらどうするの!!!」
いくらダライララが断りを外れた存在だっていっても、細菌はいるだろうし寄生虫だってもしかしたらダライララ化の影響を受けずに残っているものがいるかもしれない。
大事な妹に食べさせる訳にはいかない。
「グラ平気だもん!!!
お兄ちゃんがお話長いのが悪いんだよ」
もう、あーいえばこういう。
全く誰に似たのか。
「じゃあせめて火は通しなよ。
それくらい出来るでしょ、グラトニーは炎の加護持ちなんだし」
「グラがやると焦げちゃうよ」
頬を膨らませてすっかり拗ね顔だ。
「魔法はね、使わなきゃ上達しないんだよ」
「グラは魔法なんて無くて平気だもん」
とたとたと走ってフォークを拾い上げると、得意げにフォークとナイフを掲げた。
「フォークとナイフがあればそれで戦えるもん!!!」
「もう、あのね大罪武器にあんまり頼るとまたお腹へっちゃうよ」
平気だもんと繰り返してグラトニーは仕留めたダライララを僕の方に引きずってくる。
調理しろってことらしい。
「あの」
話に入れずずっと見ていた少女が口を開く。
「ダライララを、食べるんですか?!」
何を驚いた顔をしているんだろう。
ダライララなんてどこにでもいる生き物だし、絶滅とか危惧するような物じゃないだろう。
「しかも……ワンちゃんですよ?」
その言葉でようやく少女が引き気味に後ずさっている理由が分かった。
いつもグラトニーと一緒にいるからつい麻痺していたけどそうだった。
犬って言ったら、多くの地域じゃあパートナーとして暮らしている人が殆どだ。
僕とした事がうっかりしてた。
「でもなあ、ダライララだし」
流石に普通の犬は食べないよというニュアンスをこめて言ったつもりだったけど、彼女の顔色は対して変わらなかった。
寧ろ益々信じられないとでも言いたそうだ。
「美味しいよ?」
「え、ええ……?!」
首を傾げるグラトニーを見つめる目なんてもう理解しがたい生物を見る目だよ……。
「もう、助けて貰っておいてそれは失礼なんじゃないの?」
気持ちは分からない訳じゃないけどね。
一応、グラトニーは妹な訳だし珍獣を見る目をされるのは心外だと僕は助け船を出した。
当の本人は首を傾げたままだったが「助けて貰って」という言葉を聞いて「あ~~~~~~!!!」と声を張り上げた。
「きいちご!!!」
だと思った。
グラトニーは本当に食べる事以外興味無いもんね。
「おにーちゃんの木の実で作るパイとっても美味しいんだよ」
ウキウキした様子で両手を広げるグラトニーはもう口からダラダラ涎を垂れ流している。
「全く、そんなに大きなパイは作れないよ」
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