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「子供の頃から、泣き虫は治りませんね」
「だって、だって……」
そう、泣くあたしに、彼は、言った。
「さようなら、です。今まで、幸せでした……」
そして、微笑んだ。
「私に、幸せだという感情があるかどうか、分かりませんが」
彼は、そう言い残すと、黒いロングコートをひらりと翻して、家の前に停めていた大型マシン型バイクに跨った。
轟音を響かせて、バイクは、走り去った。
私は、彼の、長いたなびく髪が、遠ざかるのをいつまでも見ていた。
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