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「ねぇお兄ちゃん。葉菜ね、桜の葉っぱが欲しいの」
葉菜が自分から話しかけてくれたのはあの日以来だったので、陽は心底嬉しくなった。
「桜の葉っぱで何をするの?」
虫の話はしないように気をつけながらその理由を聞きだす。
「葉菜ね、甘いあの匂いが大好きなの。だから桜の葉っぱが食べたいの」
陽は初めは葉菜が何を言いたいのかさっぱり理解できなかった。
だが、よくよく聞くうちにサクラケムシと同じように桜の葉を食べれば、葉菜自身もあの香りになれると思っていることがわかってきた。
また葉菜と仲良く話せるようになったことがうれしくて、陽は毎日何十枚も桜の花びらを持ち帰った。
サクラケムシと比べると小さな葉菜もかなり大きい。
たくさん食べないとサクラケムシと同じ香りにはなれないだろうと陽は思ったのだ。
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