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今になって思い返してみれば、新入社員の頃から、課長には支えてもらってばかりだった。
なかなか仕事のノウハウが覚えられなくて、よく遅くまで居残っていた私を、課長は見放さず根気よくサポートをしてくれた。
『ほら、ホットコーヒーだ。これを飲んで、もう少し頑張れ』
いつだったか、残業中に優しげな言葉とともにほっぺたにくっつけられたカップの温かみがふと思い出されて、そっと自分の頬に手をあてる。
(あの頃から、ずっと相馬課長のことが……)
浮かんだ感傷的な気持ちを、頭から振り払った。
課長は、私にだけではなく、誰にでも優しくて、男女別なく人気があって……。
だからこそ、その課長の支社から本社への転属を社内の皆が祝福をして、快く送り出そうとしていることは、言うまでもなかった──。
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