さくら

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さくら

「ねえねえ、」 と話しかけられる。 『なぁに』 と返事をする。 「咲いてるね、桜」 と窓の外を指す。 『そうだね』 と笑う。 「お名前、教えて」 近くへ寄ってくる。 『名前、無いんだ』 びっくりした顔をされる。 「じゃあ、さくらが考えてあげる」 その子は、自分のことを“さくら”と呼んでいた。 「君の名前は、(さき)!」 それから僕の名前は、咲になった。 『この前名前つけてくれて、ありがとね』 初めて、心の底から笑えた気がした。 「ううん。ねえ咲、来年もこの桜、一緒に見ようね」 さくらも笑顔でそう言った。 『……うん、来年も見ようね』 この時僕は、あと3日だった。
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