ぼくの足は宇宙人

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   白く清潔な壁で囲まれた室内。窓から見れる外の世界。何もない白い室内に差し込まれる外の世界は、ぼくからすれば夢の世界。  ぼくも外に出たいなぁ。  この室内はぼくだけの空間だ。ぼく以外の入院患者はこの部屋にいない。会話が苦手なぼくは最初誰もいない部屋に案内されてホッとした。だけど実際何もない部屋は退屈だった。  ぼくは数日前、交通事故に遭って意識不明の重体となった。車を運転していた知らない誰かは携帯をいじりながらの危ない運転をしていて、たまたま横断歩道を歩いていたぼくがその車に轢かれたのだ。  脳に損傷はなく、何も忘れていない。ぼくを轢いた運転手の顔も覚えている。四十代ぐらいのおじさんだろうか。  二日前に目が覚め、医者に色々説明された。警察にも質問された。ありのままに答えた。  早く大学行きたいなぁ。皆と早く会いたい。  目が覚めたら大学の友達は心配してメールを送ってくれた。嬉しかった。少しだけど必要とされている気がした。    医者がドアを開けた。白い部屋に色が増える。しかし医者の服装も白だった。  「足の検査を行いますので。」  目が覚めてからベッドの中に閉じ込められたぼくは気持ちが昂る。  移動はベッドのままだったが、楽しみだ。  検査から帰って、また白い部屋に閉じ込められる。しかしそんな不満よりも医者の言った言葉に絶望していた。  「しばらくは車椅子生活をしてもらいます。足を激しく損傷していまして。あとこれからしばらくは毎日リハビリをしてもらいます。それと、もしかしたら一生車椅子生活をしてもらうことになるかもしれません。」  ぼくはこれからの人生どうすればいいのだろうか。窓から外の世界が嫌味を言うかのように見てくる。  どうしよ、これから。  深夜だろう。白い部屋も薄暗く、外の世界も暗い。  だけどカラフルな光を放つ物体がぼくの病室に停車する。  その光に目が覚めたぼくは、ゆっくりと見上げる。  カラフルな物体から灰色な生物が顔を出す。そしてぼくの窓を壊して病室に入ってきた。  窓ガラスが飛び散る。  灰色の生物は口を開けて理解不能な声をあげる。しかしぼくの顔を見て思い出したかのように、自身の首にネックレスをかけた。  「これで俺の言葉は分かるナ」  灰色の生物の言葉が頭に注ぎ込まれる。  「驚いて声も出ないカ。俺は宇宙人ダ。この星を滅ぼすか見定めにきタ。」  宇宙人が来たとしても、自分に話しかけたとしても、驚かなかった。怖くもなかった。ただ自分の足への絶望しかなかった。  「なんでぼくのところに来たの?たまたま?」  「たまたまなわけがないだロ!俺は陰ながらいつもこの星を見ていル。そこでこの星で一番興味を湧いたのがお前だからダ!ここ数日お前の元でこの星を滅ぼすかどうか見定めたイ。協力してくレ。返事はイエス以外は許さなイ。」  宇宙人は窓を壊した銃でぼくを脅す。手を上げた。  ぼくと一緒に見定める?どうやって。ぼくと行動を共にするのか?  「でもぼくは車椅子なんだよ。車椅子で移動するのは苦労するよ。」  「車椅子は知っているゾ。望みなら補助もしてやろウ。」  なぜか宇宙人とならいけそうな気がしてきた。外の世界を巡りたいとも思った。    ぼくは外に出たかっただけかもしれない。  ぼくはその夜、車椅子を病院から奪って、宇宙人と一緒に逃げ出した。  
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