ぼくの足は宇宙人

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 朝。日が昇るのを海辺でぼくは宇宙人と見た。  「あれが太陽だよ。」  「そんなことは知っていル。いずれは我々もあの星すら支配してやるつもりダ。」  気づいたら宇宙人をからかえるぐらい仲良くなっていた。  この宇宙人は地球に興味津々だ。それとぼくにやたらと尽くしてくれる。多分だけど、ぼくが協力してあげることに感謝しているのかもしれない。  「次はどこを見定めたいの?」  「特に行きたいところはなイ。」  「じゃあぼくのアパート行こう!」  「案内してくレ。」  宇宙人はぼくの車椅子を押した。一応宇宙人なので人気のいない道を使ってぼくは自分の家に案内した。    「あれがぼくの家。」  「あれがカ、小さいナ。」  「大学生の一人暮らしなんてそんなもんだろ。」  「勉強になル。我々の星では知られていないことだナ。」  ぼくは鍵を取り出して、鍵を入れ、開ける。しかし家のドアは引き戸なので、開ける時車椅子が邪魔になった。  「どいてロ。」  宇宙人はぼくを離れた位置に置いて、ドアを開けてくれた。    ぼくは家のタンスを開けて服を見る。茶色い足の丈まであるコートを取り出した。  「人目があるから宇宙人はこれを着てよ」  「いいのカ?」  宇宙人にはコートの他に帽子とズボンもプレゼントした。  宇宙人に帽子を深く被らせる。コートとズボンも着させる。灰色の皮膚は大部分隠せた。  「ありがとウ。感謝するぞ人間。」  灰色の頬は少し赤くなった気がした。  家を出て、とりあえず大学の友達に会うことにした。病院を抜け出したことを連絡したら、すぐに会いたいと言ってくれた。本当に優しい友達だな。  友達に指定された場所である大学の食堂に向かった。椅子が用意されていたが、宇宙人が寄せてくれて、車椅子に座りながら待機することにした。  「流石に怪しいだろうから、ちょっと離れたところで待ってて。」  「俺透明になれるゾ。言っただロ、陰ながらこの星をずっと見ていたっテ。」  「そんなことができるの?すごいな」  「我々の星は高度な技術が既に発達していル。だがこの星の技術ももう少しでこのレベルまで進化するだろウ。人間の生きている間に発明されるといいナ。」  自慢げに語った宇宙人の姿は服装もろとも透明になっていった。    「よー!久しぶりだな!」  「元気してたか?」  「事故大丈夫だったか?」  三人の友達が来てくれた。皆元気そうだな。  「うん。大変だったよ」  「どうしたその車椅子?足大丈夫なのか?」  「どうだろう、もしかしたら一生このままかもしれないらしい。」  少し沈黙があった。三人とも笑ってはいなかった。なんでだろ?あっそうだ!いつもみたいに遊びに行きたいな!  「これからどっか行かない?さっき海辺に行ったんだけど、そこから見た朝日が綺麗でさ……」  「……いや、講義あるし、つか、車椅子で遊ぶのはちょっとキツくないか?」  あっなんだ。そういうことか。  「いや別に遊ぶのが嫌ってわけじゃないんだよ、ただ俺ら忙しいっていうか。」  「俺らもう講義あるから行くわ」  三人ともぼくを振り返らずに去っていった。  やっぱり車椅子のぼくは必要とされていないのかな。しんどいのかな。  でも本当に講義かもしれない。  「宇宙人、次どこ行きたい?もうぼくは用事済んだよ。」  返事がなかった。  「宇宙人?」  外の窓ガラスの向こうを見る。去っていった友達の後ろにコートを着た宇宙人がいる。  ぼくは急いで車椅子のタイヤを動かした。  外に出ると友達が倒れていた。  「なんだよお前!いきなり何すんだよ!」  友達は赤くなった頬を押さえていた。  「彼は何も悪くなイ!なのになんで仲間外れをするんダ!そんなに車椅子を押すのが面倒なのカ!」  「いやだって普通にめんどいでしょ!いちいち押してられないじゃん!可哀想だとは思うよ!でも俺らが苦労するのは違くないか?」  「そうだし、俺らだって車椅子が外れたら遊ぶ気だよ!」  「なんで車椅子があると遊びたくないんだヨ!友達だったら近くで支えてやれヨ!」  「宇宙人!もうやめ……」  ガシャーーーン。  車椅子を倒してしまった。ぼくは転んだのか。 やっぱりまだ慣れてないな。  友達は転んだ隙に走ってどこかに向かっていった。  「迷惑だったカ?」  宇宙人はぼくに手を伸ばした。手を掴んで車椅子に座る。  「いやいいよ。宇宙人の主張も友達の主張も分かるよ。」  「すまなイ」  「そんなことよりもどこか行きたいところないの?」  宇宙人はぼくの切り替えに合わせてくれた。  「俺遊園地に行きたイ。一度観覧車やジェットコースターに乗ってみたいのダ。」  「あー、ごめん。車椅子だとキツいんじゃないかな。」  実際のところ乗れるのかは分からなかった。今だと乗ってもいいのだろうか。  ぼくは突然車椅子生活になった。当然準備もしていなかったから、どこに行けるのか分からない。  「じゃあ温泉ハ?」  それも分からなかった。だが、ぼくは行けるかもしれないが、宇宙人は灰色だから無理だろう。  「宇宙人は無理だよ。肌が灰色じゃんか。」  「でも肌が焦茶の黒人とやらへの差別は緩和されてると聴いたガ」  「宇宙人だからダメだよ。黒人は人間だもん。温泉に猫とか犬とかと一緒に行く人はいないよ。」  差別している気になった。  とりあえず自分の部屋に帰ることにした。  宇宙人はぼくの車椅子を優しく押してくれる。
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