ぼくの足は宇宙人

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 目が覚めるとまた白色で覆われていた。窓からは夜の月明かりが差し込んでいた。  また助かったのか。一週間も経たずにまた事故に遭うとは。運が悪いな。    近くの景色が歪む。そして灰色になっていく。  「透明になっていたのか。」  「あア」  宇宙人だった。一緒に事故に遭ったのに宇宙人は無傷だった。やっぱり体力は人間とは比べ物にならないのかな。  「お前は車に轢かれたんダ。優しい人間がお前をここまで連れてきてくれタ。」  記憶ははっきりある。宇宙人は助けを求めたが、周りはスマホで撮影しているだけで一向に来なかった。  見られたくない地球の汚点を見せてしまった。  「宇宙人でも守れる交通ルールを守れない人間がいるとはナ。」  「宇宙人でもは差別なんだろ」  「すまなイ。」  「地球は見定めたのか?」  人間のこんな醜態を見せたんだ。どうせ滅ぼすんだろ。  「……嘘をついタ。」  「え?」  「俺には元々滅ぼす力なんてなイ。」  ぼくは絶句してしまった。  「俺の惑星だと俺はそんなに偉くなイ」  「じゃあただぼくと地球を探検しただけ?」  「そうダ。」  ここで一つの疑問が生まれた。  「なんでぼくなの?」  宇宙人はしばらく沈黙した後、口を開いた。  「お前を最初に轢いた運転手ハ、運転中俺のUFOを見たんダ。そしてスマホで撮影しようとしタ。そして前にいたお前に気が付かなかったんダ。」  UFOを見たら撮影したい気持ちは分かる。だが運転中はその欲を抑えないと。  「事故に遭ったお前に申し訳ない気持ちがあっタ。だからお前に近付いたんダ。もともと人間を見定めようとは思っていなかっタ。」  興味が湧いたと言っていたが、実際は申し訳なかったからだった。少し残念に感じた。  「でも人間を見て思っタ。人間は滅んだ方がいい人種ダ。俺が偉くなったら真っ先に滅ぼしに行ク。」  宇宙人の住む惑星より地球の方が酷い環境なのか。  「いつか地球を滅ぼす時、お前と魚、優しい男以外は滅ぼス。その時にお前は我々の星に来イ。今度は我々の星を案内すル。車椅子も押すゾ。」  宇宙人にこんなに受け入れられて嬉しかった。泣きそうだった。でも。  「ダメだよ。水族館の魚と一緒だ。違う星のぼくは行ったらダメなんだよ。人間は人間の星から出たらダメなんだ。」  「我々は差別などしなイ。」  気持ちは嬉しかった。本当は行きたかった。でもダメなんだよ。だって。  「宇宙人はただでさえこの地球にストレスを感じてるじゃないか。人間にストレスを感じてるじゃないか!ぼくなんかは行ったらダメなんだよ!ストレスの元凶になる。」  宇宙人は黙ってしまった。ぼくも黙った。  ぼくは人間だ。違う星に行ったらスマホで撮影するし、差別だってしてしまう。これでいいんだ。  「……最後に頼みがあル。スイミーを星に持ち帰りたイ。」  宇宙人は自分の星に帰るつもりだ。地球を滅ぼすために。  ぼくは宇宙人の補助で車椅子に乗った。  優しく押してくれる。  ぼくたちは幼児の入院棟に向かった。  幼児の入院棟には絵本コーナーがあった。そこにはスイミーもあった。あって良かった。  「ありがとウ」  「大事にしてね」  自分の病室に戻ったら、カラフルなUFOが停車していた。  「さようなら」  「さようなラ」  UFOは発信した。空高く去っていった。  宇宙人が攻めに来るまで死ねないな。  ぼくは病室で静かに泣いた。
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