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「え、いやいや!わ、私は行かないけど!?雪とか瑠璃くんみたいに何か目的があるわけでもないし、霊がたくさんいるとか、怖すぎだし………!」
冬音はそう言いながら慌てて後ずさった。
雪は少し黙った後、フヨフヨと冬音に近づいた。
なんとなくデジャヴ。
すると雪は冬音の両頬を押さえ、怪談でも語るかのように述べた。
「フユが俺から離れるっていうことはぁ……、大分フユが危険な目に合うかもしれないけど?」
「え」
「さっきも言ったでしょ。守護霊は主を守るのが役目だって。絶対危険がふりかかるとは言わないけど、俺は傍にいないとちゃんと守ってあげられないんだから。怪我とかしちゃうかもよ?」
「え………っと、そのぉ……」
冬音は視線を反らしながら思い出す。
雪と初めて会った日、襲ってきた無霊のことを。
確かにあれは、雪が守ってくれなかったら最悪死に至っていたやもしれない。
「まぁ………自ら危険に飛び込みたいって言うなら、止めないけど?」
半強制的な脅しであった。雪は終始にやりと不敵な笑みを浮かべている。
「…………………………行きます」
いくら霊がうじゃうじゃいる消界でも、自分の身の危険には逆らえなかった。
冬音は声をすぼませながら言う。
「ありがとっ」
雪はさっきの怪しい笑みとはうって変わってにこっと笑いかけた。
なんだか楽しそうに見えたのは冬音の気のせいだろう。
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