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変な発言をする雪を黙らせた後、冬音はハッとし辺りを見回した。
「わ…………綺麗」
冬音の視界いっぱいに入ったのは、綺麗な星空のような景色。それが視界を覆い尽くしていて、床というものが存在しないようだが立てはする。
そんな謎空間の景色には深い藍色の中に粒々と輝く星みたいなものがある。これが本当に星空なのかは分からないが、引き込まれるほど綺麗だ。
ここが消界なのかな………?
綺麗だけど、それにしては何もない気が………
景色を眺めながら疑問に思っていると、いつの間に隣にいた雪がくるっとこちらを見た。
「ここが消界。何も無いように見えるでしょ?ちょっと見てて」
そう言って少し前に出た雪は、私達の方を見た。冬音は何をするのか全く分からなかったが、瑠璃はそれを平然と見ている。
タンッ
雪は一歩足を進めた。
ただそれだけのことなのに、景色ががらっと変わった。
雪が足を踏み出した部分には少し光を放った床のようなものが見えた。
少し進んでみると、確かに床に立っているような固い感触を足に感じた。
その奥を見据えると、階段や扉などが並んでいた。
さっきの状態でも見えなかっただけで存在はしていたのだろう。
「これが、本来の消界の姿。当然霊が住み着く世界だから人間は床とか階段とか見えないんだ。霊がこうやって触れたら見えるようになるけどね」
雪は自身が触れたおかげで冬音達が見えるようになった階段や床を見つめながら言った。
「そうそう、俺は人間だから当然こんなことは出来ない。消界で何かするにしても霊がいないと何も出来なかったんだ」
瑠璃が床を歩きながらそう言った。
瑠璃が冬音達に助けを求めたのはこれが理由だったようだ。
確かに瑠璃一人では消界に入ることも、こうやって床などを見えるようにすることすら出来ない。
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